再生可能エネルギーを活用する上で、次世代送電網・スマートグリッドの注目が高まっている。直訳すれば、「洗練された電力網」というこの新しい電力網構想は、とくに停電が多発するアメリカを中心に2000年頃から実証実験や導入の検討が進められており、ここ数年で欧州や日本でもそれに追随する動きが活発になってきている。
アメリカでは、2009年10月にオバマ政権が34億ドルもの予算を投じて米国の送電網を刷新すると発表して話題となったが、日本でも東日本大震災以降の節電意識の高まりを受けて、スマートグリッドを求める声も強くなってきている。そんなスマートグリッドが推進される上で欠かせないのが、スマートメーターの存在だ。スマートメーターは通信機能を備えた次世代型電力量計で、いわばスマートグリッドの根幹となる機器である。
スマートメーターを採用する主なメリットとして、まず挙げられるのがピークシフトだ。家庭単位で電力設備の有効活用と省エネに貢献するだけでなく、電力会社側で一時的に地域単位や建物単位で電力供給をコントロールすることによって、万が一の場合の停電対策にもなりえる。また、電力会社の人件費削減や、契約や解約手続きの簡略化などの利点もある。ただ、通常のインターネット通信と同じく情報をやりとりする以上、その扱いには充分な注意が必要で、ハッキングやウイルスなどへの対策は課題となっている。
節電意識の高まりにこれらのメリットを加えて、スマートメーター市場が大きな注目を集めている。東京電力<9501>は昨年10月から11月にかけて2020年までに約2700万台のスマートメーターを導入する事を発表し、2014年度に導入する約114万台のスマートメーターも三菱電機<6503>、GE富士電機メーター、東光東芝メーターシステムズの3社から調達することを決定している。これがきっかけとなり、いよいよ日本のスマートメーター市場も本格的になっていくだろう。
このような情勢の中、スマートメーターの通信に最適な、無線通信規格「Wi-SUN」の推進が日本主導のもとで進められている。Wi-SUNは、特定小電力無線やサブGHz帯(プラチナバンドとも言われている)と呼ばれる周波数帯を使用し、無線で通信を行う。Wi-SUNをWi-Fiと比較した場合、端的に言うと低消費電力でつながりやすいため期待が非常に大きく、東京電力もスマートメーターと宅内の通信(Bルート)にWi-SUNを採用することを発表している。
そして2014年1月24日、OEMソリューションで構成されるWi-SUN Allianceから初めて、日本のロームグループのラピスセミコンダクタ、独立法人情報通信研究機構(NICT)、米Silver Spring Networks (NYSE:SSNI)の3社がWi-SUN PHY認証を取得した。また、それに伴いラピスセミコンダクタの「ML7396B」他が初のWi-SUN Alliance認証製品として発表されている。
日本企業がWi-SUNに多数参画しているにもかかわらず、アライアンスの議長が日本人ではないため、日本での認知度はまだ低いものの、今後急成長を遂げるだろう技術であるのは間違いなさそうだ。スマートメーターだけでなく、スマートフォンや産業用センサー、交通インフラや農業、医療など幅広い分野で、センサーや機器を結ぶM2M、IoTの用途での活用も期待されており、それが実現すると、十数兆円を超える規模の巨大な市場の中で使用される、膨大な数のセンサー端末の中核を成す通信規格に成長する可能性もある。しばらく、Wi-SUNの動向に注目した方が良さそうだ。(編集担当:藤原伊織)