アメリカ共同国内委員会(JNC)が、60歳以上の患者の血圧目標値をこれまでの140/90mmHGから150/90mmHGへ緩和する等の新指針を提言した。
新指針は、『米国医師会雑誌(JAMA)』に今月5日掲載されたもの。これまで60歳上の患者では、血圧値が140/90mmHG超えた時点で降圧剤投与等の治療開始すべきとしていたところを、150/90mmHGまで引き上げるとしている。同様に、60歳以下の成人で、糖尿病や腎臓病を基礎疾患がある場合の治療開始基準も130/80mmHGから140/90mmHGへと緩和された。それ以外の成人についてはこれまで同様に、140/90mmHGを目安とする考え。
日本では、JNC旧指針と同じ140/90mmHGを治療開始の目安としている。これは、「日本高血圧学会が定めた高血圧治療ガイドライン2009」をベンチマークとしたもの(通称「JSH2009」)。日経メディカルオンラインの調査によれば、「JSH2009」を「よく利用している」と回答した医師が49.7%、「いつも利用している」が5.6%。合わせて半数以上の医師が「利用している」と回答している(「高血圧治療に関する調査2009-2010」調べ)。
JSH2009では、中年者では130/85mmHg未満、高齢者では140/90mmHg未満、糖尿病患者、慢性腎臓病患者および心筋梗塞後患者では130/80mmHg未満、脳血管障害患者では140/90mmHg未満を基準と定めている。さらに、緊張しやすい診察室と異なるリラックスした状態で測定する血圧を家庭内血圧と呼び、上記よりそれぞれ5mmHg低い値を目標の目安として位置づけている。
JSH2009は、前出のJNCをはじめ、世界保健機関国際高血圧学会の数値等を参考として作成されているため、必ずしも日本人に適したガイドラインとは言えないとの声も上がっている。また、日本は各国に比較して塩分摂取量が多いということもあり、独自の基準が必要ではないかという意見もある。これまでJNC基準は日本を含む各国における血圧基準値の参考とされていたため、今回の引き上げがどのように影響するか注目されている。
ガイドラインが変更されれば、これまで「高血圧」の診断を受けていた人がそうではないと見なされるといったことが起こりうる。またこれまで降圧剤を飲んでいた人が、これからは不要だということになれば多方面で混乱を招きかねない。今後の推移を注意深く見守る必要がある。(編集担当:堺不二子)