「人はなぜ横眼でものを見ないのか」、それは横目では対象が上手く認識できないから。東北大学電気通信研究所の中島亮一 産学官連携研究員・塩入諭 教授の研究グループは20日、視覚的に物を認識する場合、目が正面を向いている場合の観察に比べて目を横に向けた場合(いわゆる横目の状態)の観察ではうまくできなくなることを発見したと発表した。同研究成果により、目がどこを向いているかだけではなく、頭部や身体方向も無視できない影響を持っていることが示されたとしている。
人はかなり広い範囲に目を動かすことができるにもかかわらず、周辺に存在する対象を見る場合に(頭部の正面から左右に30°を超えた範囲)、目だけではなく、頭や体をそちらに向けることが以前から知られていた。つまり、人は横目で対象を観察するのをあまり好まないという。
これについては頭部と眼球の運動制御の問題として数多くの研究がなされ、議論されてきた。しかし一方で、人の視覚的な情報処理という観点からの議論はほとんどなされていませんでした。そのため、横目で見るという行動の原因が、脳内の運動制御メカニズムによるものだけなのか、それに加えて視覚的な認識の問題も含むものなのかは、明らかではなかった。
今回、研究グループは、視覚探索課題という実験を用いて、横目観察と視覚的な情報処理の関係について調べた。視覚探索とは、複数のアイテムの中から指定された標的を探す課題。この研究では、視覚探索課題を、顔の正面で観察する場合、顔を正面からずらし横目で観察する場合で行い、横目観察で成績が低下すること確認した。
これまでの研究では、人がどのような情報処理をしているかという問題を考える際に、主に眼球の位置を中心にした議論がなされていた。しかしこの成果により、それだけではなく、頭部や身体方向も無視できない影響を持っており、考慮する必要があることが示される。
また、この成果は、頭部方向に基づいた視覚的な認識がある可能性も示唆しており、人の頭部方向を計測することで、その人がどこに意識を向けているかを推定できるようになるかもしれないとしている。
これは、従来の眼球運動を計測するよりもはるかに容易な方法であり、効率的な情報提供を考える際に、大きな貢献をすると期待できるとしている。なお、この研究成果は、2014年3月19日に発行された米国オープンアクセス科学雑誌「PLoS ONE」に掲載された (編集担当:慶尾六郎)