「集団的自衛権の行使容認に向けた政府の素案が判明した」と29日、朝日新聞が報じた。集団的自衛権の一部が「必要最小限度の自衛権の範囲内に含まれると解釈」し、行使を認める内容になるとしている。
それによると「実際に行使する場合、原則として自衛隊を他国の領土、領海、領空には派遣せず、日本領海か公海に活動範囲を限定する方向で検討している」。
活動範囲を限定しているかのようだが、「原則」の裏側の「例外」こそ、個別具体の可能性について徹底解明するとともに、公に議論し、例外を塗りつぶし、政府素案に「原則として」との冠があるのであれば、この文言をなくさなければならないだろう。
でなければ、活動範囲は制限されているようで、全く制限する役割を果たさない。「原則」は常に「例外を認める」ことを担保している。
米国との運命共同体体質を日に日に強める安全保障上の政策展開で、政府素案が活動範囲を限定すると盛り込みながら、例外での逃げ道を設けるとすれば、範囲の限定は事実上、世界情勢、そして日本を取り巻く安全保障環境の急激な変化を理由に、なし崩しに『例外』を増やし、何の歯止めにもならない。
そもそも、安倍総理は集団的自衛権行使の範囲について『地理的概念で地球の裏側という考え方はしない』と地理的、距離的な捉え方をしない考えを国会答弁で示している。
加えて、新聞報道では『他国の領地に入っての行使はしない考え方だが、当事者の強い要請があれば例外として認める余地を残すことも検討しているという』と伝えている。
さきの『原則』といい、今回の『強い要請』といい、その基準のあいまいさは政府素案が正式なものになった場合、運用上、時の政府に大きすぎる裁量権を与えることになる。
集団的自衛権の行使は憲法改正を行うか、国民投票で過半数の賛成を得るかでない限り、認めるべきでないとするのが筆者の考えだが、集団的自衛権の一部が必要最小限度の自衛権の範囲内に含まれると強引に解釈改憲したうえで認めるとするなら、あくまでも現行憲法で認められた「必要最小限度の自衛権の範囲内」での活動でなければならない。憲法改正がなされた場合は新憲法下での枠組みになるだろうが、それは今後の話であって、政府が現行憲法を逸脱する政策をとることは憲法改正がない限り認められない。
そのことを踏まえれば、集団的自衛権を実際に行使する場合は「自衛隊を他国の領土、領海、領空に派遣しない」。活動範囲は「日本領海か公海に限定」は当然の結論だ。
今後の流れに注目したいが、あわせて、集団的自衛権行使に慎重な公明党が政府・与党協議の中で、憲法改正を待たずに行使容認に道を開くのか、国政選挙で行使容認に国民の審判を仰ぐよう政府に働きかけるのか。行使容認した場合に懸念を示す多くの国民の不安に答える『確実な歯止め』を担保できるのかでも注目したい。(編集担当:森高龍二)