【今週の展望】戦士の休息が終われば気分を出してもう一度

2014年05月06日 20:12

「今週はウクライナ情勢が東京市場を地獄に落とすかもしれない」という懸念も当然あるだろう。事実、雇用統計発表直後の2日のNYダウは、ウクライナ軍の制圧作戦で38人が死亡し国連安全保障理事会の緊急会合が開かれるというウクライナ情勢の悪化で、天国から地獄に逆落としとまではいかないが45ドル安で終えた。しかし前週のNYダウは史上最高値圏に位置していたという、株価も商いも低迷を続けていた東京市場とは状況が全く異なっていたことに留意してほしい。後で述べるテクニカルポジションも、今週の日経平均の上昇余地は、ゴムが伸びきったNYダウよりも大きい。

 ウクライナ情勢がまさかのヨーロッパの戦乱にまでエスカレートしない限り、今週の東京市場にとってアメリカの雇用統計というポジティブ材料の前では、影響はそれほど大きくはないと思われる。

 過去を振り返ると、第4次中東戦争(1973年)、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)、イラクのクウェート侵攻(1990年)のような現代史上の重大事件ならともかく、昨年春に北朝鮮が「無慈悲な鉄槌を下す」などと吠えていた程度の地政学的リスクによる株価の下落はほとんどが一過性で、むしろギリシャなど南ヨーロッパ諸国の国債デフォルト懸念のほうが断続的に浮上してはしつこく長引いて、それこそ日経平均を〃無慈悲に〃押し下げてきた経緯がある。

 安全保障やパワーポリティックスの専門家ではないので、あくまでも一般論だが、問題の先送りが少なくない経済上の出来事とは違って、人が血を流したり命を落としたり難民になるような安全保障上の由々しい事態は、国際社会がただちに抑止に動いて早期解決を図ることが期待できる。ウクライナ情勢は今週、沈静化の方向に向かうと予測する。

 それを前提に5月2日時点の日経平均のテクニカルポジションを確認しておくと、終値の14457円の上には14497円に25日移動平均線、14665円に200日移動平均線、14595~14977円に日足一目均衡表の「雲」が横たわっている。つまり一目均衡表の雲を突き抜けて上に出れば、目指す15000円は目の前にある。その雲は数週間前よりも薄くなっていて9日後にはねじれを起こすが、それを待つまでもなく突破できそうな好材料は、アメリカ雇用統計の結果以外にもある。

 今回の決算発表では、多くの企業は消費増税の影響を予測しかねて今期業績見通しは保守的にならざるを得ないが、「市場予測を下回ったら問答無用で株価下落」になっていたため、相当な優良銘柄でも株価を押し下げられるものが続出し、「アナリストはマーケットの『神』なのか?」などと投資家の不平不満が渦巻いていた。それに変化が現れたのが月が変わった5月1日で、市場予測を下回っても株価が下落しない銘柄がちらほら出てきている。その傾向が今週、後半のピークを迎える決算発表でも続けば、「決算発表による株価下落リスク」が緩和される。また、5月1日、2日のTOPIXの連続高値引けも心強いサイン。東証1部全般が堅調であれば先物の売り崩しに対する抵抗力、反発力がつく。このところ為替レートの変動幅が小さくなり、安定しているのも良い傾向だろう。

 25日線、200日線を突破すれば、それが下値のサポートラインになって、一目均衡表の雲の中に入っても上を目指せる。前週は連休の谷間の薄商いのためか、少し上昇してもすぐにヘタれる現象が起きていたが、商いのエネルギーが戻ってくれば鬼に金棒だ。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは14500~15000円とみる。7日に上昇して15000円にどこまで迫れるかで、今週末の着地点が決まってきそうだ。(編集担当:寺尾淳)