【日経平均】TOPIXが高値引けなのに不思議な19円安

2014年05月14日 20:07

 NTT<9432>の前日の決算内容は3月期の営業利益1%増、純利益12%増。同時に2500億円上限の自社株買いを発表し、それを好感され128円高。NTT東西が販売する光回線は秋からMVNO(仮想移動体通信事業者)への卸売にシフトする方針で、それによりNTTドコモ<9437>は光回線とのセット割引が可能になるため21円高。とばっちりを受けたKDDIは224円の大幅安だった。

 値上がり率1位の帝国繊維<3302>は一時ストップ高の299円高で年初来高値更新。防災関連商品が好調で1~3月の営業利益の通期見通しに対する進捗率が63.4%もあった。人材派遣のテンプHD<2181>は288円高で値上がり率8位。3月期の営業利益が89.2%増で過去最高益を更新し、今期営業利益も12.9%増でほぼ市場予測並み。参天製薬<4536>はアメリカのメルクの緑内障などの眼科用医薬品9品目の権利一式を618億円で取得し500円高で年初来高値を更新し値上がり率9位。Klab<3656>は1~3月期の業績を上方修正して28円高だった。

 不動産セクターは連日の業種別騰落率1位。住友不動産の決算は前期と今期で2期連続の最高益更新で、SMBC日興証券が目標株価を引き上げ170円高。三菱地所<8802>は53円高、三井不動産<8801>は33円高だった。

 昼休みに日揮が決算を発表し、受注環境が厳しく今期営業利益は19.4%減の見通しで市場予測を大きく下回り、しかも今期減配予想。売買代金9位の売り浴びせで448円安、値下がり率2位もやむなし。同様の事情がある千代田化工建設<6366>も続落し85円安で値下がり率13位だった。しかし同業の東洋エンジニアリング<6330>は昼休みに決算を発表し今期は大幅営業増益で、純利益が6.2倍の60億円の見込みで市場予測を上回ったのを好感され11円高になった。

 ニコン<7731>は前日発表した決算内容が悪く66円安で年初来安値更新。横河電機<6841>も同様で123円安で年初来安値を更新し値下がり率7位。電通<4324>の決算は今期営業利益が1.4%増だったが市場予測に届かず160円の大幅安。クボタ<6326>も今期の営業減益を発表し市場予測を大きく下回ったが、本来なら大幅安になるところを逆に79円高。その理由はもうこれ以上、下がる余地が乏しい最安値圏に沈んでいたからで、悪材料出尽くしとはこのこと。

 前夜、「リクルートHDが10月をメドに東証1部に新規上場」という第一報が流れた。時価総額は1兆円を超え昨年のサントリー食品<2587>や今年4月の西武HD<9024>よりも大型。IPOで得た資金でM&Aをさらに進めるという。日本郵政グループの上場は2015年春の予定で東京メトロの上場はメドが立たず、LINEの年内上場が実現しなければ今年最も話題の新規IPOになりそうだ。リクルートHDの株主で大手印刷会社の共同印刷<7914>は18円高、図書印刷<7913>は30円高と上昇をみせていた。

 この日の主役は前日の三菱ケミカルHD<4188>と大陽日酸<4091>に続き、ぞろぞろ出てきたM&Aの話題。まずはスーパーの成城石井。2011年にレックスHD傘下を離れて現在は三菱商事<8058>系の投資ファンド、丸の内キャピタルが全株を保有するが、ローソン<2651>と三越伊勢丹HD<3099>が買収に手を挙げた。正式入札なので結果は提示金額次第。ローソンは110円安、三越伊勢丹HDは10円安だったが、三菱商事は15円高で5日続伸した。

 前夜に飛び出したのが以前からドワンゴ<3715>に資本参加していたKADOKAWA<9477>によるドワンゴとの経営統合で、共同持株会社を設立すると日経新聞が朝刊1面で報じた。映画やアニメなどKADOKAWAが持つコンテンツが「ニコニコ動画」で配信可能になる。「薬師丸ひろ子特集」なんかを期待する昭和世代は放っておき、狙うのはクールジャパンの世界への発信。KADOKAWAは315円高で値上がり率11位、ドワンゴは232円高で同17位、売買代金16位と、マーケットの注目度は高かった。5月はフランスのアルストムの事業譲渡先にGEとシーメンスが手を挙げ、アメリカでは医薬品、食品大手に続いて通信業界にも大型買収の動きが出た。世界中でM&Aのつむじ風が巻き起こりマーケットに良い刺激をもたらしている。(編集担当:寺尾淳)