欧米の若者を中心に今、海外では日本文化への関心が高まっている。2013年12月に歌舞伎や能楽などに続いて「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことや、2020年の東京オリンピック開催が決定したこと、そして何といっても、アニメやファッションなど、いわゆる「クールジャパン」の力が大きく影響していると思われる。
経済産業省が2010年から掲げている成長戦略「クールジャパン」は、アニメや映画、デザイン、ファッションなどの若者文化を中心に、今後の日本の経済成長を支える戦略分野として期待される文化産業を海外に送り出し、国内外への情報発信や人材育成を進める戦略だ。とくにアニメや漫画に関しては、クールジャパン以前から海外に積極的に輸出されており、大きな評価を得ている。
そんな中、オートバイのヤマハ発動機が、まさにクールジャパンな面白い試みを展開している。その試みとは、同社のグローバルサイトにて展開されている短編アニメーション「Master of Torque(マスター・オブ・トルク)」だ。同作品はヤマハがオートバイと日本の価値観を、あらためて世界中の若い世代にアピールするために制作したオリジナルアニメーションシリーズ。7月の完結編まで計4本のエピソードが順次、WEB上で公開される予定だ。5月16日の時点ではエピソード2までが公開されている。
企業がアニメでPRするといえば、流行の萌え系アニメか、ゆるきゃらアニメなどかと思いがちだが、そうではない。また商品宣伝のCMアニメでもない。バイク乗りはもちろん、バイクに乗らない人、今まで興味がなかったような人でもきっと「オートバイって格好いい」と思えるような、大人が楽しめるクールな作品に仕上がっている。公開から約1か月で再生回数は8万回を超え、今も順調に伸び続けている。
ヤマハは昨年、3気筒エンジン搭載のMT-09(846cc)と2気筒エンジン搭載のMT-07(689cc)を欧州市場に投入した。そして、このMT-09はドイツの「iFデザインアワード」と「Red Dotアワード」の二つの栄誉ある賞を受賞するという快挙を成し遂げている。日本製品はオートバイに限らず、性能面では海外諸国からも絶対的な信頼を得ているものの、デザイン面に関しては他国に遅れをとっているのは否めない。しかし、このMT-09はそんな日本のイメージを覆すに余りあるクールなデザインのオートバイなのだ。
「マスター・オブ・トルク」と「MT-09」。カタチの違うこの2つのヤマハに共通するのは「世代」。MT-09が対象としている世代は、まさに日本のアニメに親しみをもっている国内外のクールジャパン世代だ。ヤマハだけでなく、このような取組みを行う企業が増えてくれば、クールジャパン戦略もさらに活気づいて、日本や日本製品の価値観も高まってくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)