業界の大手同士が手を結び、その事業規模の拡大をはかることは今となっては珍しくない。また同じ業界でなくとも、先日発表されたKADOKAWA<9477>とドワンゴ<3715>のように、出版大手と動画配信大手といった異なる業界の企業同士が手を結ぶケースもある。今回発表されたのは、大手造船会社同士のグループ化である。
大手造船会社の名村造船所<7014>(本社・大阪市)と佐世保重工業<7007>(本社・東京)は23日、10月1日付で経営統合するとの発表を行った。名村造船所が佐世保重工を完全子会社とする。そうして事業規模を拡大することにより、材料などを安く購入することができるというメリットがあり、国内外の造船会社との激しい競争を勝ち抜きたい考えだ。
名村造船所が持つ佐賀県の工場と、佐世保重工の持つ長崎県の工場の距離は近いこともあり、また製造している船の種類も似ていることから、開発や資材調達の面でシナジー効果も期待できるという。
名村造船所と佐世保重工業の発表によると、23日の取締役会にて名村造船所が株式を交換することにより佐世保重工業を買収し、10月1日付で完全子会社化することが決定したとのこと。名村造船所は1911年に創業された大手造船所で、鉄鉱石の運搬船やタンカーなどの製造を行っている。また2007年には北海道の造船会社函館どつくを子会社としている。佐世保重工業は、旧海軍より受け継いだ長崎県佐世保市の造船所にて事業を行ってきていたが、昨今の資材価格上昇や船の価格低迷の影響を受け2年連続の営業赤字に陥っており、14年度も営業赤字の見込み。
佐世保重工の普通株式1株に対し、名村造船所の株式0.128株が割り当てられる。また統合に伴い佐世保重工は9月26日付で上場廃止となる予定だ。
名村造船所は建造量ベースで国内4位であり、佐世保重工は国内10位である。しかし今回の統合により、今治造船、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)に次いで業界3位となる。
国内の造船会社は今、中国や韓国の企業とのし烈な競争の真っ只中だが、名村造船所、佐世保重工ともに統合することにより、そうした競争を勝ち抜きたいとしている。(編集担当:滝川幸平)