厚生省、公的年金の長期見通しを試算

2014年06月07日 07:43

 高齢となり働けなくなった人が安定的な老後生活を送るためにも、公的年金は欠かせない。もちろんそれ以外にも、毎月コツコツと貯蓄を行ったり、サイドビジネスなどで「老後のお金」を用意している人もいるだろうが、しかし公的年金が老後生活を支える大切な収入源であることに変わりはない。そんな公的年金に関して厚生労働省が3日、長期見通しを試算した財政検証結果を公表した。

 それによれば、今後働く女性や高齢者が増加し経済が順調に成長すると仮定した場合には、現役世代の手取り平均収入に対する受給者への給付水準(所得代替率)は、今の62.7%から2043年度には50.6%となるものの、それ以降も政府が公約した50%以上は維持されるという試算がなされた。しかし少子化が進行したり、経済が順調に成長しなかった場合には、48年度には50%に達し、それ以降は50%を割り込むという。

 今回の検証結果は、同日に行われた社会保障審議会年金部会にて示された。安倍晋三首相による「アベノミクス」により経済が順調に成長したケースや、反対にマイナス成長となったケースなど8ケースが設定され、そのうち内閣府推計の「経済再生ケース」で推移する5ケースでは所得代替率は50%を維持できるとしているもの、残りの3ケースでは所得代替率は50%を割り込み、一番成長の低いケースの場合だと35~37%に落ち込むとされている。

 政府は04年に年金制度改正を行った際に、所得代替率を50%に維持することを公約として掲げている。もしこれを下回った場合には、給与水準の引き下げや保険料の引き上げなどが検討される。

 はたして今回のこの検証結果を前向きにとらえるか後ろ向きにとらえるかは、各人によって異なるだろう。きっとそれは、「経済が順調に成長した場合」という条件が付くことをどう考えるかによって変わってくると思う。いずれにしても、今の現役世代やその子供世代の老後生活の前に、必ずしも明るい未来だけが待っているわけではなさそうだ。(編集担当:滝川幸平)