保育士確保に政府奔走、求められるのは安全性

2014年06月22日 16:56

 待機児童問題は相変わらず改善されず、子どもの預け先が決まらず仕事ができないといった声は依然としてなくならない。政府は待機児童対策の一環として保育士確保を掲げているが、それに伴い、2015年度を目標に「子育て支援員(仮称)」を新たな公的資格として創設することを発表した。対象は子育ての経験に富んだ主婦などで、15~25時間ほどの研修を経て資格が与えられる。非常に短時間で取得できてしまう資格だが、果たして資格保持者はどれほどの知識を身につけて、保育の仕事に従事するのだろうか。
 
 「子育て支援員」が今後どのような役割に就くのかは定かではないが、保育士補充を目的として急がれる人員集めには不安がともなう。今年3月にもベビーシッターが、預かった子どもを死なせてしまう事件があったばかりだ。07年には北九州の無認可保育園で、職員が園児を炎天下の車内に残し忘れてしまうということが起こり、熱中症によって幼い命が奪われてしまった。ずさんな管理体制が問題とされる無認可施設の見直しが急務とされた事件は、記憶に新しい。また、公的施設である認可保育園においても、園児の死亡事故は起こっている。厚生労働省が明らかにした内容によると、13年の全国の認可、無認可の両方の保育所で起きた園児の死亡事故者数は19人。公的に認可が下りている施設で4人、無認可施設で15人という内訳だ。ほとんどが睡眠中の死亡事故であり、うつぶせ寝に一因があるとされている。また食べ物を喉に詰まらせ、窒息死してしまった例もあった。

 子どもの命を預かるのが保育士の仕事である。通常、保育士の資格を得るには厚生省が指定する国家試験にパスするか、専門学校や短期大学で一定の単位を取得することが必要であり、およそ2年程度の期間を要するのが一般的だろう。しかし、せっかく保育士の資格を取得しても、別の仕事を選択する人が多いのも事実だ。体力が必要な労働環境に、最低賃金すれすれの安い給料、また保護者からの注文も多く、精神的に続かなくなって離職する保育士もいる。保育の安全性は、預ける側の保護者にとっても関心が高い問題だ。保育士の労働環境や賃金の見直しによって、職業意識やモラルを高める取り組みも必要だろう。預けられている子どもたちを主体に考えれば、安全性を高め、より質の良い保育を実現することこそが、何よりも重要な課題であることは間違いない。(編集担当:久保田雄城)