赤の光がヒトの肌を美しく見せるという。透明感や毛穴の目立ちといった肌の見え方は、肌に当たる光の波長の違いによって大きく異なるからだ。波長の短い青色光は、シミや毛穴などの凹凸を目立たせるのに対して、波長の長い赤色光はそれらを目立ちにくくする性質があるのだ。しかし、そのメカニズムは解明されていませんでした。このメカニズムを富士フイルム株式会社が解明した。同社は19日、ヒトの肌内部における可視光の透過・反射状態を任意の波長ごとに可視化し、赤色光が肌を美しく見せるメカニズムを解明したと発表した。この結果を、今後ベースメイク商品の開発に応用していくという。
また、肌内部での光の状態を解析するため、独自の解析システム「ワンショット可視分光スペクトラルドメイン型(SD型)干渉断層画像解析装置(ワンショット可視分光SD-OCT」を開発した。この解析システムは、6月26日に開催される「日本光学会主催 第39回光学シンポジウム」にて発表する予定。今後、この解析システムをさまざまな化粧品の開発に活用していく方針だ。
富士フイルムは、写真フィルム開発の過程において、光による肌の見え方の違いについて研究を重ねてきた。その研究の中で、光の波長によって肌の見え方が異なるのは、肌内部における光の透過・反射状態に起因すると考えた。そこで、それらを任意の波長ごとに可視化できる解析システム「ワンショット可視分光SD-OCT」を開発し、さまざまな波長の可視光をあてたヒトの肌の断層画像を撮影。波長ごとに光の透過・反射状態を解析した。
青色光は、肌表面の角質層と、表皮層の浅い領域からしか透過した光が反射してこないため、光を反射する皮膚の領域が薄く、また、反射する光が少ないことがわかった。一方、赤色光は、肌深部の真皮上層まで多くの光が透過するため、光を反射する皮膚の領域が広く、また、多くの光が反射されることが明らかとなった。つまり、赤色光は多くの反射光が得られるため、肌を内側から照らし出すことができ、肌に透明感を与えるからだという。これにより、赤色光にはシミや毛穴などの凹凸を目立たせずに、肌を美しくみせる性質があることを確認した。
また、「ワンショット可視分光SD-OCT」は、OCT装置の光源を可視光とし、かつ、任意の波長での測定を可能にした。さらに独自の光学設計技術の活用により、一瞬で対象物の断層画像が得られるワンショット方式のシステムを開発。これにより、可視光の波長ごとに肌内部の光の状態を可視化した断層画像の撮影が可能になった。さまざまな波長の光の集合体である白色光の中から、カラーフィルターによって任意の波長を選択して測定することを可能にした。また、複数の波長の光を同時に透過させる多波長同時透過フィルターの開発により、RGB(赤・緑・青)の光を同時に照射し、同じ箇所のRGB分光断層画像を一度に撮影することができる。(編集担当:慶尾六郎)。