7月1日にオーストラリア準備銀行理事会が開かれ、政策金利が発表される。2日はイエレンFRB議長の講演がある。3日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会が開かれ、終了後にドラギ総裁が記者会見を行う。今週はアメリカ主要企業の決算は予定されていない。
一時は大台割れ寸前の15027円まで下落した27日の日経平均の値動きは、いろいろと示唆に富んでいた。どこかの誰かさんの売り仕掛けは、地合いや投資家心理などの条件が揃ったら作戦が見事に決まること。それでも15000円の心理的な節目と25日移動平均線(26日時点で15007円)が重なる「ダブルサポート」の下値支持力は強力なこと。NYも東京も落ち着いて見えても、世界を見渡せば円高、株安を招くリスクがゴロゴロ転がっていること。アルゼンチンの債務問題が13年も昔の話が蒸し返されて危機に拍車がかかったように、どこからどんなリスクが飛び出してくるかわからないこと。リターンにレバレッジをかけていると、リスクにもレバレッジがかかり増幅されること、などである。
週間で6週ぶりのマイナスになった前週は、テクニカル的にみれば大きな変化があった。27日の終値15095円に対して5日移動平均線は15283円で188円も上にある。62円下に25日移動平均線15033円があり、200日移動平均線は14805円で13日のメジャーSQ値15807円に重なり、75日移動平均線は14633円でまだ下にあるが、どれも一時期よりは現在値との差が縮まった。日足一目均衡表の「雲」はさらに下の14276~14598円。24日に164まで上昇した騰落レシオは27日は135まで低下し、20日は+3.6%だった25日移動平均線乖離率は、27日はわずか+0.4%まで低下した。前週の調整で「買われすぎ」の過熱感はかなり冷やされたとみていい。
だからと言って「今週の株価はもう下がらない」という判断は危険。今週は6月から7月へ月が変わるからだ。政府の予算も学校も大半の企業の決算期も4月から始まる「年度」カレンダーに慣れている日本人にはピンとこないかもしれないが、欧米では「1月」「7月」は区切りの月。12月決算の企業が大部分で、6月末は中間期末の重要な節目になる。それは外国人投資家の売買が約6割を占める東京市場にも反映し、7月1日を境に相場の様相が微妙に変わることがある。
たとえば昨年は、6月第3週(17~21日)の日経平均の日中値幅の平均は349円、第4週(24~28日)のそれは371円と、毎日毎日200~400円も値動きするアップダウンの激しい相場だった。6月21日などは目が回りそうな激動ぶりで628円も動いている。それが7月1日に始まる7月第1週(1~5日)は平均194円、第2週(8~12日)は264円と日中値幅が小さくおさまって落ち着き、6月は13000円台だった日経平均は14000円台に乗せている。その前年の2012年も、月末最終営業日の29日に241円も動くなど6月最終週の日中値幅平均は122円だったが、7月第1週のそれは75円に縮まり、6月最終週は8000円台だった日経平均は9000円台に乗せていた。海外の中間期末の6月末を通過して7月になると、変化がみられていた。
今年は、7月に入ると状況が変わる可能性は昨年以上かもしれない。なぜなら6月は外国人投資家の存在感が週を追って増しているからで、東証の「投資部門別株式売買状況(二市場)」によると、5月最終週は売り越しだった外国人投資家は6月第1週(2~6日)は2515億円、第2週(9~13日)は1412億円、第3週(16~20日)は2534億円それぞれ買い越した。6月の株価上昇の担い手は年金だ、官製相場だと言われたが、実は外国人。その外国人が今週30日の月曜日に「ドレッシング買い」なども交えて6月末の中間期末の〃数字をつくった〃らその後、7月からどうするかが、大きな分岐点になる。
昨年7月は、6月後半の低位・高ボラティリティ相場にピリオドを打ち、値動きは安定して株価水準は上がった。今年の6月後半の日経平均はその1ヵ月前と比べて1000円以上も高くなり、ボラティリティも6月第3週の日中値幅が平均153円、第4週のそれが138円で、昨年の同時期と比べると半分以下にとどまっている。相場の様相は全く異なっている。おそらく外国人投資家の上半期の日本株のパフォーマンスは、大いに満足とまではいかないが4月頃の低迷ぶりを考えれば上々の出来だったはず。あくまでも想像の域を出ないが、「上半期は『新・成長戦略』を見届けて日本でまずますの結果を出しました。下半期はいよいよインドにシフトします」という戦略も、あるのではないか。
もちろんいきなり「手のひら返しの情け無用の売り攻勢」はしないだろう。日本株売りと言っても「調整しながら徐々に日本株からシフトしていく」というものになると思われる。だが、そんな風向きの微妙な変化を敏感にキャッチして、ある日突然、ささいな売り材料をきっかけに売り攻勢をかけてくる勢力がいて、これが怖い。それは27日の後場にもチラリとその姿を見せていた。ボラティリティが小さい堅調な相場が続いたので日本の投資家は急落に慣れていない。梅雨末期の「ゲリラ豪雨」ならぬ「ゲリラ急落」で日経平均が一気に50円も下落すれば、それを見て狼狽売りする投資家が出て下げ幅が一気に100円以上に拡大、ということもあるだろう。