日銀の国債買い占めがもたらす流動性低下と歪み

2014年07月07日 12:22

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日銀が6月18日発表した2014年1~3月期の資金循環統計によると、日銀が持つ日本国債(短期国債含む)の3月末時点の残高は前年と比べて57.2%増の201兆円と過去最大となった

 日銀が6月18日発表した2014年1~3月期の資金循環統計によると、日銀が持つ日本国債(短期国債含む)の3月末時点の残高は前年と比べて57.2%増の201兆円と過去最大となった。日銀は昨年4月以来の量的・質的金融緩和で国債を大量に買い入れており、発行残高に占める日銀の保有割合は20.1%と、生命保険などの保険会社を抜き初めて最大の保有主体になった。

 日銀は目標の「2年で物価上昇率2%」に向け、量的・質的金融緩和を行い、毎月6兆~8兆円、長期国債を買い入れている。その結果、国債を取引する債券市場で日銀の存在感が一段と高まっている。市場では国債価格は高止まりし、国債の利回り(長期金利)は0.6%近辺と低位での推移が続いている。株価が上昇すれば、安全資産である国債は下落(金利は上昇)するが、このところの株高でも金利の上昇の勢いは限られている。

 「長期金利に押し下げ圧力をかける」という日銀による巨額の国債買い入れ目的が奏功している反面、市場では歪みが蓄積されつつある。財務省で行われている国債市場特別参加者会合においても、日銀が国債を大量に買い入れることにより、市場の流動性が低下している点には留意が必要との意見が出ている。流動性の低下がショックへの耐性を衰えさせている。誰かが売りに転じると市場が一斉に売りに向かい、買い手不在で債券相場が急落する懸念がある。

 この背景には国が発行した国債をすぐさま日銀が市場から吸い上げている実態がうかがえる。市場を経由しているとはいえ、財政法で禁じる日銀による国債の直接引き受けとの差が曖昧になっている。「日銀が国の財政赤字を穴埋めする財政ファイナンス」を担っている。市場がそう意識し始めると、金利が急騰するリスクが生じる。

 現時点では金利急騰が現実となる可能性は低いだろう。しかし、一旦それが起これば市場や経済に甚大な影響をもたらす。日銀が国債を買い占め続け、市場からショックへの耐性を奪い続ければ、歪みはさらに蓄積され衝撃度は増していく。金融政策の舵取りはそれだけ難しくなるのだ。(編集担当:久保田雄城)