【今週の展望】惜敗が続く状況は、大負けするよりも怖い

2014年07月13日 20:11

 だが、昔の阪神や今の横浜DeNAのようなプロ野球のリーグ最下位常連球団のファンなら知っている。シーズン開幕から〃指定席〃の最下位に落ちるまでの間、春頃は大敗の連続ではなくむしろ競り合いの好ゲームの惜敗が続いて、ファンは「調子は決して悪くないから、いけるはず」と期待を次の試合につなぎながら、だんだん負けが混んでいくことを。反対に、大勝ちがなくても競り合いのゲームで辛勝して勝ちを拾っていく落合監督時代の中日などは、Aクラスの常連だった。

 プロ野球のような長丁場のレースは、一度や二度、大負けするよりも惜敗が1週間続くほうが、本当は怖い。前週の東京市場は、まさにそれだった。せめて1日だけでも「終値数円高」ぐらいの辛勝で終わってくれれば、その後の展開はまた違っていたかもしれないが、後の祭り。連敗は否が応でも不安をかき立てられる。しかも最下位常連球団のファンの春頃の心理と同じように、「経済指標や企業決算や需給の調子は決して悪くないから、いけるはず」と思われているから、「なぜ日本株はパフォーマンスが良くならないのか?」と、よけいに不安になってしまう。

 プロ野球は、ファンがどう思おうと選手が奮起して活躍すれば成績は良くなるが、株式市場は市場関係者の強気、弱気、不安心理など「センチメント」の部分が市況を大きく左右する要素なので、さらに厄介だ。まさに「病は気から」だから、白星こそ最高の良薬。今週は、日経平均終値プラス1円以下の「銭差」の辛勝でも全くかまわないから、とにかくこの連敗をストップさせることが先決問題になるだろう。

 もっとも、日経平均はすでに高値圏から滑り落ち、過熱感は消え去っている。11日終値15164円のテクニカルポジションを確認すると、25日移動平均の15217円、5日移動平均の15275円、ボリンジャーバンドの25日線+1σ(第1標準偏差)の15370円よりも下にある。下には15063円のボリンジャーバンドの25日線-1σ(第1標準偏差)、15084円の7月SQ値、14863円の200日移動平均、14807円の6月SQ値、14734円の75日移動平均がある。日足一目均衡表の「雲」は14524~14706円で、はるか下に横たわる。

 25日移動平均乖離率はマイナス。騰落レシオは107.3まで下がった。サイコロジカルライン(12日)は5.0。ストキャスティクス(9日)はFastが38.92、Slowが52.67。これは海の家の看板の「ビール、冷えてます」ならぬ「日経平均、冷えてます」で、テクニカル的にはちょうど飲み頃だ。

 そのビールの味をまずくするのが、ファンダメンタルズ的には前週10日の国内機械受注統計、11日のポルトガルの金融不安のようなネガティブ・サプライズや、アメリカの長期金利が一向に上向かず反転の兆しが見えない為替のドル円の円高傾向だろう。

 だが、それ以上に警戒を要するのがNYダウの「天井崩れ」である。それに恐怖心を抱く「高所恐怖症患者」は実のところ、NY市場の関係者よりも東京市場の関係者のほうが多いという。NYダウは史上最高値まで上昇したので、崩れても「あそこまで上がれば下がる」と納得できるが、日経平均のほうは11日終値は年初来高値より1000円も下にあり、為替の円高のせいで株価が日米連動してくれない。「上がってもいないのに、アメリカの天井崩れで一緒に崩されたら、たまらない」という東京サイドの心理も、わからないでもない。そうでなくても前週まで「海外の好材料への反応は限定的、悪材料への反応は影響大」で、主要市場で東京だけが貧乏クジを引くような状況だったのだから、被害妄想的になるのもしかたないところ。

 そんな「被害妄想的高所恐怖症患者」の心を癒せるかどうかわからないが、今週の日経平均の下値のメドを考えてみると、11日のSQ値の15084円がかなり効くとみる。もしそれを突破されても6月のメジャーSQ値の14807円が控えている。心強いのはその両方が「まぼろしのSQ値」だったこと。まぼろしが心強いというも変な話だが、「オペラ座の怪人」のファントム(「まぼろし」という意味)ことエリックが最初、歌姫クリスティーヌを徹底サポートしていたように、まぼろしのSQは日経平均を徹底サポートしてくれると期待したい。

 一方、上値のほうの「天井桟敷の人々」だが、割り込んでからまだ日が浅いので15217円の25日線、15275円の5日線は抵抗をみせず、ボリンジャーバンドの25日線+1σ(第1標準偏差)の15370円あたりまでは回復可能とみる。それはアメリカの雇用統計が発表される前の3日の水準である。それより上は国内で4~6月期の決算発表が本格化する来週のお楽しみにとっておこう。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは15084~15370円とみる。もしNYダウのシャンデリアならぬ天井崩れに伴って東京市場が大崩れしても、14807円までで地下室のファントムが「まぼろしのSQの愛の力」で食い止めてくれることだろう。ジェラシーに悶え狂うのはその後のお話。(編集担当:寺尾淳)