2017年日本を席巻すると噂の「21世紀の資本論」とは

2014年07月20日 21:31

画像・2017年日本を席巻すると噂の「21世紀の資本論」とは

「21世紀の資本論」という経済書が世界的なベストセラーとして話題を集めている。ピケティ氏の「経済的不平等」の研究によれば、戦後フランスで所得の不平等が縮小したことに関わっているのは、給与ではなく、財産相続を困難にしたことによるものだという。

 「21世紀の資本論」という経済書が世界的なベストセラーとして話題を集めている。執筆者は1971年生まれの気鋭のフランス人経済学者トマ・ピケティ氏だ。専門は「経済的不平等」。2002年にはフランス最優秀若手経済学者賞を受賞している。現在教授の職に就いているパリ経済学校の設立にも貢献し、06年から07年に渡って初代代表も務めた。近代のフランス社会における、所得格差の縮小の根拠を明らかにしたという功績で知られている人物だ。

 ピケティ氏の「経済的不平等」の研究によれば、所得の不平等が縮小したことに関わっているのは、給与ではなく財産相続を困難にしたことによるものだという。戦後フランスで税制が改革され、所得税導入により、収入が多い者ほど多く課税を受けるという制度になった。このことにより、結果的に富裕層の財産相続も目減りすることとなり、格差が縮小したと説いている。ピケティ氏は「21世紀の資本論」の中で、富裕層と貧困層の格差をなくすためには、資産への課税を重くすることが重要だと説いている。

 「21世紀のマルクス」とも評されるようになったピケティ氏は、労働運動の革命家であった両親の元で育っている。もともとは裕福な家庭の出である両親は、1968年に学生や労働者を中心に起こったパリ5月革命を支持し、民主化を求めて支配的権力に反発。自由と平等を訴えた。この思想がピケティ氏に受け継がれ、氏が説く経済論の根幹にあるものと見られる。

 フランス語で書かれた「21世紀の資本論」が英訳されたのは今年3月だが、またたくまに40万部以上が売れ、異例のベストセラーとなっている。アメリカやイギリスでも人気は高く、講演会にはたくさんの人が押し寄せる。

 ロンドン大経済政治学院での講演でピケティ氏は、競争の必要性を認めながらも、「格差が拡大しすぎると、持たざる者と持つ者の階層が固定されてしまい、是正されない暮らしの中で経済活動への意欲が奪われてしまう」と述べた。

 日本でも、1億総中流と言われた時代は過ぎ去り、一度足をふみはずしてしまうと貧困から抜け出せなくなる「すべり台社会」や、いくら働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア」が問題視され、経済的不平等への関心は高い。しかし「21世紀の資本論」の日本語訳が出版されるのは2017年の予定だ。それまで待ちきれないと言う人は、英訳であればアマゾンのキンドル版で読むことができる。(編集担当:久保田雄城)