国土交通省は今年7月4日、「国土のグランドデザイン2050」を公表した。2050年を見据えた、国土づくりの理念や考え方を示したもので、昨年秋から9回にわたる有識者懇談会を開催するなどしてとりまとめられた。グランドデザインとは、壮大な図案・設計・着想であり、長期にわたって遂行される大規模な計画とされる。
このグランドデザインは急激な人口減少に対しての問題意識が中心に据えられている。日本の38万?の国土を縦横1kmのメッシュで分割すると、そのうちの約18万?には人が居住している。この居住地域の6割で人口が半減以下になり、2割では人が住まなくなると推計されている。全国の山間部の平均的な人口ピラミッドのうち、人口1000人のモデル集落での人口推計をしてみた結果、現状のままの人口動態で推移した場合、50年には約300人まで人口が減少すること、特に小中学生の激減により地域の小中学校は廃校に追い込まれる可能性が高いとも言及されている。「地域消滅の危機」であるとの指摘がされている。
こうした問題に対して、基本戦略を策定している。その中の1つが「中山間地域から大都市に至るまで、コンパクト+ネットワークにより新たな活力の集積を図り、それらが重層的に重なる国土を形成する」というものだ。こうした地域で買い物、医療等のサービスを維持することが課題ではあるものの、一定の移住者を呼び込めれば、「地域を持続的に維持できる可能性」があるという。
そのために、コンパクトな拠点をネットワークで結ぶ地域構造を構築していく。行政、福祉、商業などのサービス機能を集約化し、交通及び情報ネットワークで住民と結び、その後、誘導策等により居住地の集約化を進める。例えば、地方においては。商店、診療所など日常生活に不可欠な施設や地域活動を行う場を、歩いて動ける範囲に集め、周辺地域とネットワークでつないだ「小さな拠点」を作っていく。「小さな拠点」は、いわば「国土の細胞」とされ、全国で5000箇所程度を想定している模様だ。
5月に日本創成会議が公表した「消滅可能性市町村リスト」では、人口減少で40年までに日本の半分の市町村が消滅する可能があるということが話題になったが、これと基本的な問題意識を同じくする。全国的にこのグランドデザインによってまちづくり、地域づくりが進められていくことになる。(編集担当:久保田雄城)