7月29日、厚生労働省はこれまで明確に定まっていなかった待機児童についての定義を見直し定義を統一する方針を固めた。来年4月から始まる子育て支援新制度に合わせて定義を統一する予定だ。この定義見直しにより待機児童が「倍増」する可能性があるという。
7月29日、厚生労働省はこれまで明確に定まっていなかった待機児童についての定義を見直し定義を統一する方針を固めた。来年4月から始まる子育て支援新制度に合わせて定義を統一する予定だ。保育所への入所を希望しているにもかかわらず入ることができない待機児童。各自治体は対策を行い「待機児童ゼロ」を発表するところも現れたが、この定義見直しにより待機児童が「倍増」する可能性があるという。
今回の定義見直しで厚労省は待機児童を「認定を受けて入所を申し込んだが利用していない児童」と定める。これまで定義に含むかを各自治体に委ねていた認可保育所以外の認定子ども園や小規模保育に入所を申し込んだが利用していない児童や、親がやむを得ず育児休業を延長した場合なども一律に対象に含める。
この定義統一は待機児童数に大きな影響を与えそうだ。「待機児童ゼロ」を発表してきた横浜市や名古屋市はこれまで育児休業の延長などの場合は数に加えてこなかった。横浜市は今年4月の待機児童数を20人と発表しているが、定義の見直し後には2,000人を超してしまう見込みだ。既に定義見直しによって待機児童数が急増した例もある。東京都目黒区は今年度から親が育児休業を延長したケースを待機児童に含むことを決定したが、その影響で昨年度132人だった待機児童は今年4月1日時点で247人と二倍近い増加となった。同時期の全国の待機児童数は2,786人だが、共同通信の調査では定義見直しによりその数は少なくとも18,975人と6倍以上に膨れ上がる。
今回の定義統一は待機児童の正確な実像を把握することが目的だ。これまで定義に何を含めるかは各自治体の判断に委ねられていたが、ばらつきがあり実態が反映されていないとの指摘が出ていた。しかし、自治体にある意味自由な判断が許されてきたからこそ、横浜市や名古屋市は「待機児童ゼロ」を政策目標として住民や議会の理解を得られてきたことも事実だ。新しい定義では親一人ひとりの意思の確認が必要とされる可能性もあり、これまでのように「ゼロ」を目指すことは困難になる可能性が高い。これまで多くの賛同者を得ることで結果的に待機児童が減ってきたことは親にとっても利益となっていたはずだ。
正確なデータを把握することは確かに大事である。しかし、自治体の意志をくじくことのないよう、慎重に進めることもまた重要だろう。(編集担当:久保田雄城)