中国主要都市における被害推定額が5600億円、米国におけるオンライン被害額2兆円と推定される日本のアニメ・マンガの海賊版対策にむけて、業界と行政がタッグを組んでの撲滅運動に乗り出した。5ヶ月間にわたる大規模な海賊版の集中削除や正規版リンクサイトで、海外のユーザーに本家本元の日本アニメをアピールするのが狙いだ。
アニメやマンガは日本が世界に誇れる大切な文化の1つだ。にもかかわらず、作者や版元の許可無く模造する、海賊版の流通が後を絶たない。
コンテンツの海外展開にあたって、大きな障害となる海賊版の被害は、文化庁の調査によれば(2012年)、中国主要都市(北京・上海・広州・重慶)における日本コンテンツの被害額は年間約5,600億円と推計されている。
同じく文化庁の2010年調査によれば、海賊版の製造は、「中国(香港含む)」(55.1%)、「日本」(30.6%)、「台湾」(24.5%)、「その他アジア」(22.4%)、「韓国」(18.4%)の順に多く、アジアに集中しており、欧米での比率は5%未満と低いことがわかる。
一方、販売・消費では、「中国(香港含む)」(57.1%)、「日本」(49.0%)、「台湾」(32.7%)、「その他アジア」(26.5%)、「韓国」(22.4%)の順に多く、やはりアジアへの集中が見られるものの、「北米(米、カナダ)」(18.4%)、「フランス」(16.3%)、「イタリア」(14.3%)、「ロシア」(10.2%)などの欧米でも10%超の高い国が見られた。
同時に経済産業省の2013年度調査では、米国におけるマンガ・アニメのオンライン海賊版の被害額は約2兆円と推計され、被害額の大きさが際立っている。
こうした中で今回、経済産業省の後押しを受けて、日本の出版社及びアニメ関連企業15社が委員として参加する「マンガ・アニメ海賊版対策協議会」が発足。日本が誇るマンガ・アニメを全世界で守り、さらなる良質な作品を生むためのプロジェクトである「MAG(Manga-Anime Guardians) PROJECT」が始動した。
MAGでは①5ヶ月にわたって行われるマンガ500作品、アニメ80作品の海賊版集中削除②マンガ・アニメの「本物」が見つかる正規版リンク集サイト「Manga-Anime here」オープン③名作マンガ・アニメから選りすぐりの「ありがとう」シーンを繋いだムービーコンテンツを公開による啓発活動--を実施する。
文化庁が行った中国の海賊版実態調査によれば、海賊版のユーザー達は、正規作品が自国内で利用できる場合、5元や10元といった小額ではあるが対価を払ってもいいと考える人が一定以上の割合でいることがわかっている。またその際には「中国版の字幕があること」などが正規版への希望として挙げられている。海賊版を撲滅し、正規品を守りながら海外へ展開していくためには、こうした海賊版ユーザーの本音を上手に取り入れることも重要な視点になるだろう。(編集担当:横井楓)