幼稚園と保育所の機能をあわせ持つ認定子ども園。保護者の就労の有無に関係なく利用が可能で子育て支援も充実した子どもを持つ親にとっては力強い味方である子ども園が、今不安に駆られている。認定子ども園のうち少なくとも55園が認定返上を検討していることが8月1日、NPO法人「全国認定子ども園協会」(埼玉県)の調査でわかった。2015年度から始まる「子ども・子育て支援新制度」で補助金が減る可能性があることなどがその理由として挙げられている。
「子ども・子育て支援新制度」は、15年4月より本格スタートする子育て家庭の支援制度だ。これまでの幼稚園と保育所、両方の特性をあわせもつ「認定こども園」の拡大がその目玉だ。幼稚園・保育所のうち「就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する機能」「地域における子育て支援を行う機能」という認定基準を満たす施設である認定子ども園は、待機児童の解消を目的に06年から設置が始まった。ただ、現状では幼稚園が認定を受けたものは文部科学省が所管し、保育所が認定を受けたものは厚生労働省が管轄しており、補助金も別々に出しているため子育て支援のための制度がバラバラに進められていた。いわゆる「幼保一元化」の議論は1990年代から行われてきたが、文科省と厚労省の「縄張り争い」が泥沼化しているとも言われ、制度作りは難航してきた。
民主党政権での議論を経てようやく結実したこの制度の普及のために内閣府は「子ども・子育て支援新制度 なるほどBOOK」を作成しホームページでも公開するなど広報に努めているが、肝心の認定子ども園への説明は不十分なままだ。全国認定子ども園協会によれば新制度での補助金額試算のために国が配布した計算ソフトで各園が補助金額を試算したところ減額されるケースもあったといい、新制度の掲げる「子ども園の普及を図る」という目的にもかかわらず、国の制度普及への取り組みが逆効果となっている可能性も示している。
認定返上を検討する園が出ていることはこれから制度を開始していく上でも大きな問題となることは疑いようがない。国には不安を払拭する義務があるといえるだろう。不安払拭のため、独自に取り組む自治体もある。例えば横浜市は先月、国の補助基準を先行して取り入れ、独自助成を実施する方針を決めた。国が自治体の取り組みに遅れているのは恥ずべきことだ。早急に制度の理解に努め子ども園が認定返上をせぬように説明を行うべきだろう。(編集担当:久保田雄城)