禁煙が今ほどのブームになっていなかった頃には、飲食店における「全面禁煙」は必ずしもメリットだけをもたらしてくれるものではなかったように思う。まだ数多くいた喫煙者を店から遠ざける要因にもなっていたはずだ。しかしかつてない禁煙ブームが起きている昨今では、「全面禁煙」は店のアピールポイントの一つとなり、それを理由に店を訪れる人の数も増えている。そして喫煙者たちも「全面禁煙」は今の大きな時流と考え、やや諦めがちにではあるにせよ、足先を変えることなくそうした店に入っていっている。もちろん、店を変えたところで、その店でも同様に「全面禁煙」が実施されている可能性が高いという事情も関係している。
こうした飲食店の「全面禁煙」化の流れを受けて15日、日本マクドナルド<2702>が国内の全3135店舗の店内を完全禁煙にしたとの発表を行った。ここのところ業績がかんばしくない上に、中国食肉加工会社が使用期限切れ肉問題などの影響により売上が落ち込みをみせている日本マクドナルドとしては、そうして店内を完全禁煙にすることにより、ファミリー層の顧客を獲得し業績回復を図りたい考えだ。
日本マクドナルドは今回の発表に際して、「すべてのお客様を、マクドナルドらしい笑顔とメニューでお迎えするとともに、いつでも、どの店舗でも、おいしい空気で、おいしいひとときを過ごしていただける店舗体験の提供に努めてまいります」とコメントしている。また喫煙者に対しては、「ご不便をおかけすることとなりますが、小さなお子様からお年寄りまで、幅広い層のお客様のお食事の場として相応しい店舗環境を目指す取り組みとして、ご理解賜りますよう、何卒お願い申し上げます」とコメントしている。
同じ外食産業ではファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス<8179>が去年の11月、約9割の店舗に喫煙ブースを設置した上で全店禁煙化を行っている。
喫煙者にとってはますます肩身が狭くなる話かもしれないが、大手ファーストフードチェーンのマクドナルドが全店禁煙に踏み切ったことにより、ほかの外食企業もこれに同調する可能性は高い。この禁煙ブームの波は、まだまだ収まりそうにない。(編集担当:滝川幸平)