安倍内閣が「日本再興戦略」のなかでとして掲げているのが、「2020 年に指導的地位に占める女性の割合30%」。これは、女性の力を日本最大の潜在能力として捉え、経済活性化、そして経済成長につなげていくという考えだ。これにより、指導的地位の象徴である“女性社長”の増加も期待される。
帝国データバンクでは、2014 年 6 月末時点の信用調査報告書ファイル「CCR」、企業概要ファイル「COSMOS2」から「株式会社」「有限会社」の代表を務める社長のべ11万5505 人のデータ、および当該企業の業績データを抽出。女性社長の就任経緯、年齢、業況、出身大学、業種などを集計・分析した。なお、同様の調査は今回が初めてとなる。
それによると、全社長数に対する女性社長数の割合は8万7167人7.4%で、13.5 社に1社程度が女性社長であることが判明した。社長の就任経緯(各経緯の割合)をみると、女性社長は「同族継承」が 50.9%と過半数を占めてトップ。自身で起業した「創業」は、34.7%で約3分の1となった。一方の男性社長は、「創業」が 43.1%でトップ。以下、「同族継承」(36.6%)、「内部昇格」(11.5%)と続いた。女性社長の「同族継承」を押し上げている背景には、平均寿命の差がある。7月31日に厚生労働省が発表した「平成 25 年簡易生命表」によると、男性の平均寿命が 80.21 歳であったのに対し、女性は 86.61 歳と 6.40 歳女性の方が長い。夫が立ち上げた事業を妻が引き継ぐケースが必然的に多くなるという。
女性社長の出身大学をみると、トップは日本大学で230人。以下、慶應義塾大学(206人)、早稲田大学(192人)、青山学院大学(184人)といった関東圏の有名私大が名を連ねる。上位は私立大学が占めており、国公立大学のトップは、お茶の水女子大学(40人)。また、“最高学府”と称される東京大学は38人となっている。なお、関西圏では、同志社大学の127人がトップであった。
業種別にみると、美容業(1407人)が 35.1%でトップとなった。2 位の化粧品小売(478 人、34.4%)とともに割合が3分の 1を超え、“美”に関する業種が上位に目立つ。 3 位は老人福祉業で2039人(29.9%)。介護の現場で指導的立場となる介護福祉士国家試験の合格者のうち、毎年8割近くが女性となっている(厚生労働省)ことからも、この分野への女性進出が他業種に比べ進んでいることがわかる。
「性別に関係なく、有能な人材を活かす」という考え方は否定されるものではないが、現実的には出産、子育て等により離職を余儀なくされるケースは少なくない。同社では、女性社長の就任経緯が「同族継承」に偏っていることは、こうした問題の存在を裏付けているとしている。環境整備の進捗度合いに比例しながら、女性の進出が進んでいる業種を中心として、女性社長数は増加していくとみられる。女性社長数増加とともに、活躍が期待されるのはこれからだとしている。(編集担当:慶尾六郎)