増加し続ける空き家は治安の悪化や犯罪の温床にもなりかねない。住宅用地には固定資産税の軽減措置が適用されるが、家を取り壊して更地にしてしまうと対象外となって税負担が増すため、住めなくなった家でもそのまま放置するケースが目立っている。
増加し続ける危険な空き家対策として、政府は税の軽減制度を見直すことを検討している。人の居住用としての家屋には、固定資産税が軽減される特例措置が適用されているが、危険な空き家と判断された場合には、この特例措置を外すという。
固定資産税は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて課税標準額を市町村が決定し、標準税率1.4%をかけて算出される。しかし住宅用地については課税標準額を軽減する措置が取られており、住宅1戸につき200平方メートルまでの小規模住宅用地に対しては価格×6分の1、200平方メートルを超える一般住宅用地には価格×3分の1に抑えられている。住宅取得を支援する目的の特例措置だが、空き家となった場合に取り壊して更地にしてしまうと、住宅用地としては認められなくなる。そのため、税の負担増を避けるために、住めなくなった家屋でもそのまま放置するケースが目立っているのだ。
総務省が今年7月末に発表した「住宅・土地統計調査」で、全国の空き家率は2013年で過去最高の13.5%となり、820万戸にのぼることが分かった。別荘等の二次的利用される空き家を除いても、12.8%という高水準にある。空き家率は1993年では9.8%、98年11.5%、2003年12.2%、08年13.1%となり、今後も上昇し続けることが予想されている。
別荘等の二次的住宅を除く13年度の空き家率が最も高いのは山梨県で17.2%、次いで愛媛県16.9%、高知県16.8%、徳島県16.6%、香川県16.6%、鹿児島県16.5%、和歌山県16.5%、山口県15.6%となった。一方、比較的空き家率の低かった東京都や埼玉県、千葉県、神奈川県などの都心部でも10~11%という高水準にあり、空き家に対する不安や問題意識は全国で高まっている。
空き家が増加した背景には、少子高齢化がある。住宅の持ち主が高齢者施設に入居し、持ち家が空き家となってしまう例や、亡くなった後に家を相続する人がいないというケースは少なくない。空き家は景観を損ねるばかりでなく、地震の際には倒壊のおそれがあり安全性にも問題がある。またゴミの不法投棄や放火などの犯罪や治安の悪化に繋がりかねない。政府は危険な空き家を撤去し更地になった後も、固定資産税を軽減する措置を一定期間適用することを検討しているが、果たして効果のほどはあるのだろうか。(編集担当:久保田雄城)