しかし、2013年末の状況はテクニカルポジションは「買われすぎ」ではなくても、マーケットの需給はかなり不利だった。たとえば週末時点の裁定買い残は、2013年12月13日は3兆5938億円だったが27日には4兆433億円で、2週間で4495億円、12.5%も積み上がっていた。その間、投資主体別売買動向の「外国人」は+7052億円、+8803億円、+4474億円と、3週間で2兆329億円という膨大な額の買い越しを記録している。その「外国人」は年が明けると、「暗黒の1月」の1ヵ月間で今度は1兆1695億円の売り越しに出て、12月に積んだポジションを大きく減らしていた。信用評価損益率も12月6日の-4.94%から20日には-6.96%に悪化していたが、この需給の変化を見ると「掉尾の一振」も「暗黒の1月」も、ひとえに海外投資家の自作自演だったことがよくわかる。マーケットのドラマには、筋書きを書いて演じた人間が必ずいる。
では、2014年末はどうなのだろうか? すでに説明したように、もし大納会で18000円をオーバーし「掉尾の一振・3年連続年間最高値引け」を果たして終わったとしても、テクニカル的にはそれは決して無理してつくった数字ではない。それは2013年末も同じだった。年明けに「暗黒の1月」が再来するかどうかは需給、特に裁定買い残、「外国人」の売買動向、信用評価損益率で推し測ることができるだろう。まだ19日までのデータしか公表されていないが、裁定買い残は12月5日時点の3兆5741億円から19日時点は2兆9155億円へ6586億円、18.4%も減っている。投資主体別売買動向の「外国人」は12月第1週に3851億円、第2週に1595億円買い越したが、第3週は逆に3629億円売り越しており、トータルでは1817億円しか買い越していない。信用評価損益率は12月12日に-8.76%まで悪化したが、19日は-8.08%に改善している。
データを比較すると、海外投資家がお祭りのように兆円単位で買い越した2013年末と2014年末では、マーケットの需給の様相が全く異なっている。裁定買い残も1兆円以上の差があり、2013年末の約4分の3に減った2014年末のほうが需給バランスは良い。信用評価損益率の悪さが気になるが、それも改善の方向にある。結論としては、年明けに信用取引がらみなどで多少の調整局面はあるとしても、「暗黒の1月の再来はない」と判断してもいいのではないだろうか?
ただし、大納会で18000円台に乗せたとしたら、大発会から始まる来週の上値追いはあまり期待はできない。アメリカの雇用統計待ちの様子見もあり、正月休み明けの国内投資家のエンジンがかかるまで、しばらく時間も必要だろう。一方、下値は調整局面は必ず来ると考えて、12月の「まぼろしのSQ値」の17281円あたりまでは想定しておいたほうがいいかもしれない。
ただ、テクニカル的にはちょっとした味方が現れる。それは日足一目均衡表の「雲」で、年明けからこれがどんどんせり上がり、厚くなってくる。1月1日時点では16024~16677円だが、大発会の5日は16089~16866円、8日には16205~17033円と上限が17000円台に達する。15日には16279~17520円で上限はピークに達する。「雲」はそれ自体が下値支持の役割を果たすので、来週は日経平均が地政学的リスクや円高など何らかの要因で大きく押し下げられても「雲のバウンド」で最低でも17000円台は堅持できそうだ。もし「雲」の中に落ちたとしても、「雲」の内部では上限が上値抵抗線、下限が下値支持線になって値動きを「雲」の中にとどめておこうとする「コクーン(まゆ)」のような性質がる。日経平均を「雲」というまゆの中に閉じこめたままその「雲」がせり上がっていけば、一緒に上昇して元に戻ることができる。
ということで、来週1月5~9日の日経平均終値の変動レンジは17281~18132円とみる。(編集担当:寺尾淳)