便秘薬が慢性腎臓病の新しい治療薬に 東北大と慶大が発見

2014年12月29日 09:38

 高血圧や糖尿病などの原因により発生する「慢性腎臓病」は慢性で進行性に腎機能が低下する病態であり、最終的に末期腎不全に陥るのみならず脳心血管疾患の発症率や死亡率を高めることで知られている。しかし慢性腎臓病の進行を抑制する治療としては高血圧や糖尿病に対する治療を行う以外にはないのが現状だ。

 東北大学大学院医学系研究科および医工学研究科病態液性制御学分野の阿部高明教授らは17日、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣(ふくだ しんじ)特任准教授、曽我朋義教授らの研究グループとともに、便秘症の治療薬として使用されるルビプロストンという薬剤に慢性腎臓病の進行を抑える効果があることを発見した。この研究は、便秘症治療薬であるルビプロストンが腎機能の悪化に伴って変化する腸内環境を改善させることにより、体内の尿毒素蓄積を軽減させ、その結果腎臓の障害進行を抑制する効果があることをマウスを用いた実験で明らかにした。

 同グループは慢性腎不全の状態にしたマウスにルビプロストンを投与し、腎臓病の進行が抑制されるかを検証した。その結果、ルビプロストンを投与した腎不全マウスでは投与していないマウスに比べて腸液の分泌が増加し、腎不全時における腸壁の悪化が改善されていたという。

 また次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の解析を行ったところ、腎不全マウスでは Lactobacillusや Prevotellaといった一般に善玉菌と呼ばれるような腸内細菌種の著明な減少が見られたという。しかし、ルビプロストン投与によりこの善玉菌の減少が改善していることが明らかになった。さらに、CE-TOFMSという装置を用い腎不全時に血液中に蓄積する尿毒素などの代謝物濃度をメタボローム解析により網羅的に測定した結果、ルビプロストンを投与したマウスでは腸内細菌に由来する尿毒素とされるインドキシル硫酸や馬尿酸といった物質の血中濃度が減少することが明らかになったとしている。

 今後、人への応用に向け、副作用の少ない低容量かつ腸で溶ける製剤の開発やルビプロストンの効果がある腎不全患者の選び方などの検討などを行い、実際の腎臓病患者への治療薬開発を目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)