石油元売り国内2位の出光興産が、同5位の昭和シェル石油を買収する方向で検討している。2015年2月にも基本合意したうえで、TOB(株式公開買い付け)を実施し、子会社化を目指す。買収総額は5000億円規模とみられる。国内で石油需要が減少するなか、統合により生産体制の効率化や原油調達力の強化を図る。
石油元売り大手の再編は、2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングス(HD)の経営統合で、JXホールディングスが発足して以来。出光と昭和シェルの売上高の合計は約8兆円となり、首位のJXHDの約12兆円に迫り、2強時代に入る。
今夏以降、出光の月岡隆社長と昭和シェル石油の香藤繁常CEO兼会長が会談を繰り返すなど、両社は調整を重ねてきた。出光はTOBで、昭和シェルの筆頭株主で株式の約35%を保有する英・オランダ系石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルの株式も買い付ける。
英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは昭和シェル石油株売却後、過当競争で利益が少ない石油精製・販売事業から撤退する。ただ、安定して収益が見込める化学事業や液化天然ガス(LNG)事業は継続する。
出光はすでに主力銀行の三井住友銀行から買収資金を調達するメドを着けているという。12月の昭和シェル石油株の時価総額は、およそ3800億円で、TOBに当たって20~30%のプレミアムをつけるもよう。買収総額は5000億円規模になりそうだ。
出光の製油所は北海道、千葉、愛知。昭和シェルは神奈川、三重、山口にあり、地域的に重複しない。拠点ごとに最適な製品を生産して効率を高めるが、将来は統廃合も課題になる可能性がある。約8000カ所あるという系列ガソリンスタンドの統廃合も進め、流通の収益力強化を目指す。規模拡大により産油国との価格交渉力を高める効果も期待できる。原油買い付けや輸送コストの削減も進める。
石油元売りの再編を巡っては、業界3位のコスモ石油と同4位の東燃ゼネラル石油が来年1月、千葉県にある両社の主力製油所を一体運営する合弁会社を設立する。出光の昭和シェル買収交渉により業界再編が加速しそうだ。
国内では、少子化などで自動車市場の伸び悩みやエコカーの普及などで石油需要が減少している。ガソリンなどの燃料油は最盛期の1995年に比べて20%以上減少している。長中期的にはさらに20~30%程度の減少が見込まれている。
出光興産が昭和シェル石油の買収交渉に乗り出す背景には、国内の石油製品需要の減少という構造的な問題がある。両社は石油元売りとして生き残りをかけ、国内で稼げる体制を構築したうえで、海外市場の開拓を加速させる狙いがある。今後、自動車が普及し石油製品の需要が増大する新興国などへ投資を振り向ける。
経済産業省は過剰な製油能力を解消するため、国内にある全23製油所の再編統合を推進。今年7月には、日量396万バレルの生産能力を2016年度末までに10%削減するよう求めていた。出光、昭和シェルの再編も後押しする見通しで、両社が産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を申請すれば、税制優遇措置などの支援を行う方向だ。(編集担当:吉田恒)