【今週の展望】「18000円チャレンジ」に死角はあるのか?

2015年01月25日 20:12

 前週はさまざまなことに区切りがついた週だった。日銀会合は金融政策現状維持。ECB理事会は大方の予測通りに初の量的緩和に踏み切り、中身も決して中途半端なものではなくマーケットにとって特に不満はないものだった。HSBC中国製造業PMIは下振れ予測を良い方に裏切って上振れし、週末25日が投開票日のギリシャの総選挙も結果が出る。

 そして今週、27~28日にアメリカではFOMCが開かれるが、利上げについてはイエレンFRB議長が昨年12月、「少なくとも向こう2回のFOMCで始めるとは考えられない」と言明しているので、その1回目の今回に政策金利でアクションを起こすことはまずなさそうだ。したがってマーケットでは、FOMC結果待ちの様子見ムードはそれほど大きくないと思われる。アメリカの10~12月のGDP速報値は30日発表で、東京市場の今週の日中取引が全て終了した後。国内の経済指標は30日に集中的に発表されるが、その影響が及ぶのは30日の1日だけ。となると日米とも今週、株式市場に影響を及ぼす要因はひとえに決算発表ラッシュの企業業績で、「業績相場の週」ということが言える。

 その企業業績は日米ともある程度まで期待できる。前週に発表された決算は、派手な上方修正こそないもののとりたてて悪いものも見当たらなかった。この調子でいけば決算発表や業績観測報道が今週の東京市場を力強く支えてくれそうだ。そのベースの上に上値追いのスイッチを入れてくれる要素と言えば、やはり第一に「政策」だろう。26日に通常国会が召集され、安倍首相の施政方針演説は新年度予算案の審議が始まる2月中旬に延期されたが、その前の緊急経済対策を盛り込んだ補正予算案の審議の場で何らかの「政策Something new」が出ることに期待したい。

 逆に、前週の重要イベント通過でリスクオン気味になると思われる今週のマーケットに冷水をかけリスクオフさせそうな「死角」としては、一つに為替レート、もう一つに地政学的リスクが挙げられる。

 最近はNYダウが下落すれば為替が円高に振れる傾向がみられ、それが株価の「日米連動」を誘っている。原油先物価格は今月、下げられるだけ下がった感があるので底を打つとみるが、新興国通貨、特にロシアのルーブルに急落の心配がつきまとう。その影響がユーロ、ドルに及べばリスク回避の円買いが起きそうだ。一方、地政学的リスクのほうで怖いのはやはりテロで、先進国は常にその脅威にさらされている。日本も例外でないと前週、日本人は嫌というほど思い知ったはず。紛争地域への軍事的プレゼンスに関与せず、もっぱら平和的な国際貢献で援助をばらまいて、そこの国民が日本に悪い感情を抱いていなくても、原油安でカネに困った非情なテロリストは日本を特別扱いしてはくれなかった。

 そうしたファンダメンタルズ面の背景をふまえて、前週末23日終値時点のテクニカル・ポジションを確認しておこう。日経平均終値は17511.75円で、週の最終日になってようやく16279~17454円に位置していた日足一目均衡表の「雲」の上に飛び出して取引を終えた。5日移動平均の17300円も、25日移動平均の17268円も、75日移動平均の16748円も、200日移動平均の15723円も、全て見下ろせる位置まで昇ってきた。前々週末はマイナスだった25日移動平均乖離率もプラスに変わり1.41%。ボリンジャーバンドは16930円の25日線-1σと17605円の25日線+1σの間のニュートラル・ゾーン。前週の騰落レシオは23日にようやく100を超えて100.09まで上昇した。そのように「買われすぎ」でも「売られすぎ」でもない状況にある。

 そんな時は本来、上下どちらにも振れやすいが、すでに説明したファンダメンタルズ的な要素を考慮すると今週は売られにくく、買われやすくなると思われる。下値が限定的で上値が高く望めるとなると、リスクオンで久しぶりに「18000円チャレンジ」が見られそうな情勢になってきた。あと489円上昇すれば18000円を突破できる。

 今週は限定的な下値のメドの候補としては、1月のSQ値の17341円、5日移動平均の17300円、12月のSQ値の17281円、25日移動平均の17268円、27~28日は17351円、30日は17317円に位置する今週の「雲」の上限などがある。おそらく週間の予測では「今週の下値は25日線がメド」という意見が多数を占めると思われるが、ザラ場ではなく終値ベースならもう少し強気にみて、今週の「雲」の上限や1月のSQ値に近い5日線の17300円でもいいように思える。

 一方、高望みできる上値はボリンジャーバンドの25日線+2σの17943円も18000円も超えて、25日移動平均乖離率が「買われすぎライン」のプラス5%に達する18131円近辺まで上昇可能とみる。終値ベースでも18100円に接近できるだろう。23日終値に対して600円近い上昇になるが、「灰色の1月」の東京市場は我慢の次にまた我慢を強いられ上昇のエネルギーが抑え込まれてきた。企業の好決算の追い風を受け、政策の「マッチ」や他の何かの要因で火がつけばエネルギーが解放され、一気に18000円の大台を突破できる強い相場になってもおかしくはない。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17300~18100円とみる。原油安、ギリシャ、スイス、中国、さらにはテロと外部のリスク要因に次々にさいなまれた「灰色の1月」も、日米企業の決算発表で盛り上がったところでまもなく終わる。今週は時には遠くに、時には近くに、近づいてくる春の足音が感じられる週になりそうだ。「雪降りてしづけかりとふ朝庭に春の時雨か音わたり来る」(北原白秋)。(編集担当:寺尾淳)