日産自動車は販売好調で供給が追いつかない米国の増産分を日本に移すなど世界の拠点間で生産補完・交替を図る。円安効果によって、国内生産を10万台以上積み増す計画だ。北米向け輸出車の生産を福岡県苅田町の九州工場で再開する。ルノー日産アライアンスはクルマの設計共通化コモン・モジュール手法により、同じプラットフォームなら世界のどの工場でも生産できる体制を目指している。為替変動に応じて適切な場所で生産できるというわけだ。
設計や部品の共通化でコスト削減のほか、需給や為替変動に応じ世界規模で生産調整しやすくなる。今回の円安を受け、北米向け主力SUVの新型「ローグ」(エクストレイル)を九州工場で生産する。ローグはコモン・モジュール手法を採用した最新車種で、日米中など同アライアンス工場ならどこでも生産でき万台以上引き上げる計画だ。
円安傾向で国内工場のコスト競争力が高まり、北米に新工場を建設するよりも、設備の整った日本の工場を使った方がコスト面で有利なため輸出に切り替えると言うわけだ。
日産では為替リスクを回避しコストを削減するため、北米向けSUVの生産を米国に移した。九州工場から米テネシー州スマーナ工場にローグの生産を、また米ミシシッピ州キャントン工場にムラーノの生産を、合計で年間20万台移管していた。
2015年3月期、日産の世界生産台数は前期比104%の527万5000台と過去最高を更新する見通し。ここ数年は新興国や北米などで生産を増やしているが、国内生産は9%減の91万1000台と1960年代以来、初めて100万台の大台を割り込む。しかし今回の円安で海外工場の補完拠点として国内工場を活用し、2016年度はふたたび100万台以上の国内生産を目指すというわけだ。
日産は、2014年4~9月にグローバル上期決算で売上高5兆1446億円(前期比108%)、営業利益2619億円(同118%)と北米での好調な販売やヨーロッパの景気安定が寄与した。これが日本の需要低迷やロシアや新興市場の長期にわたる経済不安の状況を相殺した。また、ルノー・日産アライアンスが開発したコモン・モジュール・ファミリーの適用車種であるSUV「キャシュカイ」「ローグ」「エクストレイル」モデルの好調な販売も業績向上に寄与した。(編集担当:吉田恒)