【今週の展望】「まつりの後」はテクニカルの「時を待て」

2015年04月12日 20:38

 「マイナーSQ」の日だった4月10日の午前9時7分、日経平均株価は2万円を突破し、3月の初め頃からマーケット関係者が唱え続けていた「願文」がついに聞き届けられた。前日、株価ボードにカメラを向け続けて空振りだったテレビ局スタッフの苦労は報われ、東証アローズに拍手がわき起こる。しかし2万円を超えた時間はわずか数分間で、その後は2万円接近すらできず、終値は2万円から100円近くも安い前日比マイナス30円。「春の2万円まつり」のクライマックスで15年ぶりにありがたい「ご神体」にタッチし、浮かれ騒いで気勢をあげた後、悪酔いの倦怠感に見舞われたかのような終わり方だった。

 まつりの後始末は、なかなか厄介。2万円タッチの置き土産はSQ値で、20008円という高い場所にまつり上げられ、SQ日の日経平均はそれに一度も届くことができず「まぼろしのSQ」が出現した。上についたまぼろしのSQは上値抵抗線になりやすい傾向がある。そばの2万円は心理的節目でもあり、今後、上値追いに対してダブルで屈強な抵抗をみせるかもしれない。

 上値追いの抵抗勢力はそれだけではない。悪化した3日のアメリカ雇用統計をショックとも思わないかのようにやり過ごし1週間で472円も上昇したことで、テクニカルポジションではけっこう上に行ってしまった。

 マイナスになった6日も後場に持ち直し小幅安だったので、チャート上では白い陽線が6本も立って10日は7営業日ぶりの陰線(黒いローソク足)だった。その間、4月1日に19000円を割って安値をたたいてから約1000円も上振れしている。そのように4月上旬は上昇ピッチが早すぎたので、やはりスピード調整が必要だろう。電車に乗っていて、「後続の電車が遅れておりますので、時間調整でしばらく停車いたします」という車掌さんのアナウンスが流れるのと同じような状況で、「後続の電車」とはテクニカル指標のこと。それがある程度、追いついてくるまで「時を待て」という時間調整である。

 10日の終値19907.63円のテクニカルポジションを確認すると、移動平均線は全て下にあり、最も近い5日移動平均線も19734円で173円も下にある。25日移動平均線は19386円で25日移動平均乖離率は+2.67%。買われすぎラインの+5%はまだ遠い。75日移動平均線は18319円で、17786~18414円の日足一目均衡表の「雲」の中にある。200日移動平均線は16842円。ボリンジャーバンドでは25日線+1σの19731円と+2σの20074円の間にあり、ニュートラルゾーンの19047円(-1σ)~19731円(+1σ)から上に外れ、10日は+2σにも一時接近した。

 買われすぎ、売られすぎを判断するオシレーター系指標は、25日騰落レシオは107.00で8日の112.65、9日の111.19から低下し、サイコロジカルラインは50.00、RSI(相対力指数)は53.7で、それらは25日移動平均乖離率ともども買われすぎラインには届いていない。買われすぎのシグナルが点灯したのは9日・Fast(%D)が94.26で70をオーバーしているストキャスティクスと、67.1で50をオーバーしたRCI(順位相関指数)ぐらいである。

 だからといって、10日にマーケットアナリストや証券会社の社長などいろいろな人が言っていた「2万円はただの通過点」を鵜呑みにして、「今週は2万円を超えてさらに上に行く」と思うのは早計だろう。

 もちろん中・長期の視点で見れば、日銀の金融緩和が継続し、前場でマイナスになれば日銀がETFを買い支えしてくれて、年金資金やゆうちょ銀行のポートフォリオ変更で買われ、企業業績も改善がいっそう進み自社株買いなど株主還元策も積極的で、2020年には東京五輪が控え、「地方創生」などアベノミクスの政策効果も期待できるなど東京株式市場は好条件が揃っている。「2万円程度が限界ですよ」などとは口が裂けても言えないだろう。それが「2万円はただの通過点」という言葉の背景にある認識である。

 しかし、1週間先までの「今週の展望」では、踊り場はあっておかしくない。いや、踊り場ぐらいないと息切れしてしまう。さらに言えば10日の2万円タッチは「つくられた2万円」の気配もあったので、一時的に停滞してくれたほうが〃健康的〃とも言える。