従来、大腸がんの検査は医療機関でのみ実施されていたが、大手検査薬メーカーの栄研化学<4549>が自宅で検査できる検査薬の市販を計画している。検査方法は、便に混じる血液成分から大腸がんの疑いを判断するもの。便を試薬に溶かし、特殊なプレートに垂らすだけで、プレート上に結果が表示される。
『日本経済新聞』(4月7日)の報道によると、同社はこの検査薬を2016年度上半期(4~9月)にも薬局やドラッグストアなどで市販する。価格は1000円程度の見込み。この報道を受けて、4月7日、同社の株価は前日比86円(4.2%)高の2122円まで上がった。
1939年に興亜化学工業として創立された同社は、食品微生物検査用試薬、環境微生物検査用試薬、各種検査に対応する検査用器具・器材などの事業に取り組んできた。大腸がん検診で定量的な検査を行う便潜血測定装置・試薬、定性的に検査を行う試薬の製造にも力を入れてきた。
大腸がんは早期発見、早期治療をすれば、ほぼ100%完治できるにも関わらず、現在女性のがん死亡原因の1位、男性の3位となっている。日本対がん協会によると、2013年には大腸がんによって、女性2万1846人、男性2万5808人が亡くなっている。
09年にはNPO法人ブレイブサークル運営委員会が設立され、大腸がんの早期発見、早期治療のために官民連携による大腸がん検診・精密検査の受診勧奨を推進している。栄研化学はオリンパス〈7733〉とともに同委員会のオフィシャルサポーターとなって、大腸がんに関する普及啓発事業に取り組んできた。
現在、医療用検査薬の小売店などでの販売は、尿糖、尿たんぱく、妊娠の3つに限定されている。厚生労働省は15年度中に医療用検査薬の販売規制を緩和する方針で、栄研の計画はこれに対応したもの。
手頃な価格で、大腸がんの検査薬を購入できるようになれば、大腸がんの早期発見が進むと期待されている。(編集担当:久保田雄城)