教育へのビッグデータの活用が進みつつある。
岡山県の中学校では、生徒の解答用紙を蓄積してデータ解析し、生徒の学習進捗の予測や学習進度に応じた問題の作成などに活用しようとしている。このデータ解析に協力しているのが、岡山大学だ。
現在、大規模に収集された個人の履歴データ(縦断的データ)の活用に関する研究が進められているが、縦断的データはまとめればまとめるほど、本来存在する行動特徴を埋没させてしまうという問題点が指摘されている。こうした中で今回、岡山大学大学院教育学研究科教授の寺澤孝文氏は、「スケジューリング」というアプローチによって、この問題をクリアした。
例えば、英単語学習を例にとると、学習者が、いつ、どの単語を、どのように何回学習し、それから何日後にテストを受けるのかという、何万という詳細なイベントの生起スケジュールを年単位で生成する。それに合わせて学習を提供し、全ての反応を回収し、スケジュール条件ごとに集約、解析し、時系列条件がそろった個人の行動変化を描き出せるようにした。
一方、教育産業もビッグデータの活用に乗り出している。ベネッセホールディングス〈9783〉は2014年4月に、ソフトバンク〈9984〉とともに学習支援クラウドサービスの合弁会社「Classi(クラッシー)」を設立した。4月から、生徒の学習状況や成績、活動履歴などが蓄積され面談などで活用できる「生徒カルテ」などを提供する有料サービスを開始している。15年度は全国120校以上の高校・中学にサービスを提供する。
さらに、総務省もまた14年度から「先導的教育システム実証事業」を開始しており、福島県新地町・東京都荒川区・佐賀県の3地域で教育ICTシステムの実証研究を進めている。
今後、学校や自宅での学習にスマホやタブレットの利用が増えるにつれて、ビッグデータの活用の環境も整ってくる。調査会社のIDC Japanは、国内教育分野におけるタブレットの出荷台数は18年には、13年比で5倍以上の128万台に拡大すると予測する。ビッグデータの活用が、「教育大国」日本の復活の起爆剤となるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)