日産、北米向けSUVを日本で生産開始から見える米国回帰

2015年07月21日 07:05

画・日産、北米向けSUVを日本て_生産開始ら見える米国回帰

日産は、北米向けクロスオーバーSUV「ローグ」を、九州で補完生産することを決定したと発表した。生産開始は、2016年春を予定しており、年産10万台程度の規模を計画している。これにより、16年度の国内生産台数は100万台を回復すると見込んでいる。

 日産<7201>が、北米向けSUVを日本で生産開始したが、この裏には、中国市場への不透明感がある。同社は、北米向けクロスオーバーSUV「ローグ」(日本名:エクストレイル)を、九州で補完生産することを決定したと発表した。生産開始は、2016年春を予定しており、年産10万台程度の規模を計画している。これにより、16年度の国内生産台数は100万台を回復すると見込んでいる。

 「ローグ」はコンパクト・クロスオーバーSUVの中核となるモデルで、13年11月に米国で発売を開始した。今年1?6月の米国での販売実績は前年同期比で36.3%増の13万5000台と、好調な販売を維持している。

 「ローグ」は米国と韓国で生産しているが、工場の生産能力が販売に追いつかない状況が続いており、増産に向けた様々な対応策を検討していたとしている。同社の生産子会社である日産自動車九州で補完生産することを決めた理由は、同社がグローバルコストリーダーとして、日産のグローバル生産拠点の中でも高いコスト競争力を持つこと、ルノー・日産アライアンスとしてグローバル標準のラインを導入済みであり多車種混流生産などのフレキシビリティを有することなどを上げている。

 しかし、こういった理由以外にも中国の景気の先行き不透明感も、今回の決定に影響を与えていると思われる。世界最大となった中国市場だが、先月からの同国の株価下落で、金融自由化への道が、後退していると見られるからだ。日本を追い抜き世界ナンバーツーの経済規模を誇る中国だからこそ、日産が警戒するのも当然だろう。

 そうすると、世界ナンバーワンの経済大国・米国へのセールスがより重要になってくる。元々、日本の自動車産業がブレイクスルーしたのも1970年代、80年代の米国だったので、いってみれば、これは米国回帰である。日産の北米マーケットのシェアは約3割を占める。もっとも、これは日産に限った話ではなく、日系メーカーの多くにとってもそうだろう。例えば、富士重工<7270>のスバルは、日産の倍で6割である。他のメーカーも米国(及び北米)のシェアは高い。

 販売台数では、中国に抜かれた米国だが、そこはやはりモータリゼーション発祥の地。中国とは伝統も底力も桁が違うだろう。(編集担当:久保田雄城)