生活の党の小沢一郎代表の記者会見に、記者団からとんでもない、しかし、的確な質問が飛び出した。
安保法制に関し「その本質はアメリカに頼まれて作ったのではないかという噂が広まっている」というもの。「背景にある南沙諸島の問題が衆院安保特別委員会であまり取り上げられていないが・・」と問いかけがあった。
小沢代表は「玉城君〈幹事長〉のほうが良く中身を知っていると思います」と答えるようにふった。
すると、玉城デニー幹事長は「この間の様々な文書を参考に調査している」と答えた。そのうえで「最初に2010年8月に出された第3次アーミテージ・ナイ・レポート、その中に安保法制の骨格にある要求や原発推進、TPPに参加させろ、そういうものが明確に日本への提言という形で入っている」と語った。
玉城幹事長は「4月末に改定された新ガイドラインの中にも当然、その時点で安保法制の中に書き込まれている新3要件に該当する言葉がそのまま入っている」とし「つまりガイドラインそのものも実は憲法違反のそういう流れから作られていて、ガイドラインとして認められるべきではないのではないかと今考えている」と提起した。
そのうえで「今の安保法制の本質はアーミテージ・ナイ・レポートやガイドラインにも書いてあるとおり、南シナ海のほうの監視を日本も積極的に行うべきであるというふうなことが書かれているあたり、アメリカは財政的にこれ以上もたないので金を出してくれる、自衛隊も出してくれる日本に任せてしまおうという魂胆ではないのかと。そのための集団的自衛権を行使する法案がどうしても必要で、憲法改正まで待てないというのがアメリカの本音ではないかと思いつつ、今、研究している」と答え「第3次アーミテージ・ナイ・レポートとガイドラインをもう一度皆さんも読んでみれば、この安保法制との結節点が見えてくるのではないかと思います」と答えた。
第3次アーミテージ・ナイ・レポートは米国政策の起草者ともいわれ、クリントン政権で国防次官補を務めたジョセフ・ナイ氏(ハーバード大学特別功労教授、国際政治学者)が米国上下両院の国会議員を集め作成した「対日戦略会議の報告書」。
提言では「新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で均等に配分された相互運用性のある情報・監視・偵察能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時、緊張、危機、戦時といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である」。
「イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は航行の自由を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである」。
「国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである」。
「米国と日本は民間空港の活用、トモダチ作戦の教訓検証、そして水陸両用作戦能力の向上により、共同訓練の質的向上を図るべきである。また、米国と日本は、二国間あるいは他の同盟国とともに、グアム、北マリアナ諸島及びオーストラリア等での全面的な訓練機会の作為を追及すべきである」。
陸上自衛隊がオーストラリア本土での米軍とオーストラリア軍共同訓練(クリスマン・セイバー)を活用し、7月にアメリカ海兵隊との偵察ボートによる上陸訓練や戦闘射撃訓練を行ったのは弊社でも報道した通り。米豪共同訓練に陸自が初めて参加した。
「米国は、日本の武器輸出三原則の緩和を好機ととらえ、日本の防衛産業に対し、米国のみならずオーストラリアなど他の同盟国に対しても、技術の輸出を行うように働きかけるべきである」
オーストラリアの新型潜水艦開発については日豪米3か国共同開発・生産になるとの報道もある。このようにレポートと安保政策を突合させると、一致部分が多く驚かされる。この点に関して、参院安保特別委員会でも政府の受け止めを質して頂きたい。
レポートと安倍政権の安保法案の目指すものが類似していることに驚いている方がすでにおられた。ジャーナリストの田原総一朗氏だ。田原氏は「安保関連法案は『第3次アーミテージ・ナイ・レポート』の要望通り?」と日経Bizアカデミーで指摘されていた。「安保関連法案の主要な項目がレポートで指摘された内容であることを知り、改めて驚いた」と記述されている。第3次レポートをマスコミ大手は是非、全文を和訳で紹介してみる価値があるのではないか。週明けから始まる参院での質疑を注視しよう。(編集担当:森高龍二)