アメリカ主要企業の決算は4~6月期の発表がフィナーレ。3日にAIG、4日にADM、スプリント、ケロッグ、ウォルト・ディズニー、コーチ、5日にプライスラインG、ラルフローレン、テスラ・モーターズ、6日にエヌビディアが発表する予定。
前週は「なぜか上海再来」の週になった。中国政府当局が7月前半に大量に買い支えて保有した株を持て余して困ったのか「出口戦略」をほのめかしたりと、ドタバタはまだ続いている。上海市場はかつての「魔都」の時代から41年間も断絶して1990年に再開場したので、事実上まだ25年の歴史しかない。それが今や、時価総額で東京をしのぎニューヨークに次ぐ規模の株式マーケットに急成長したのだから、管理体制が追いつかないのも無理ないのか? それに乗じて、その昔、フランス租界や米英日の共同租界の闇に棲息していた上海の魔物たちが、黄浦江を渡って浦東新区の上海証券取引所に集結している。
その「魔市場・上海」にさんざん振り回されて、本来なら落ち着きを取り戻せるはずの前週の日経平均は20070~20585円の間で515円も動揺した。それでも大台は割らず週間騰落で40円のプラスだったから、底堅さと回復力は健在。その基盤にあるのは4~6月期決算発表たけなわの国内企業業績だろう。中国市場での不振で通期見通しを下方修正する銘柄がみられたが、それも2022年の冬季オリンピック開催地が中国の北京に決まったことで風向きが変わる期待が出てきた。今週の上海市場もご祝儀ムードに包まれ、毎日のように取引終了直前に上海総合指数を急落させて「魔の時間帯」を演出した魔物たちも、しばらくはお昼寝してくれそうだ。
今週は、外部要因としてはこのチャイナリスクの低下期待、FOMCを通過したNY株式市場や為替市場の落ち着きで条件的には良くなった。ギリシャはウクライナと同じく、すでに過去の話。国内では6月のマクロ経済指標が少し悪化して、4~6月期GDPのマイナス成長は確実とみられているが、選別物色されても企業業績がおおむね堅調なので、この程度では大きな下げ要因にはならないはず。アメリカ雇用統計待ちの様子見ムードは出るものの、ハワイのTPP交渉が最終決着したり、もし、一向に上がらないインフレ率を気にした黒田日銀がIMFの顔を立てて6~7日の日銀会合で「プチ金融緩和」でも打ち出せば、5年連続マイナスの8月相場でも今年は上々の滑り出しをみせるだろう。
それを背景に7月31日の日経平均終値20585.24円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、20417円の5日移動平均、20369円の25日移動平均、20203円の75日移動平均は全て下にある。
日足一目均衡表の雲は20105~20471円で、75日、25日、5日の移動平均線3本が全て雲の中に包み込まれるという珍しい現象が起きた。今週の雲は、下限は20105円に張りついたままだが、上限は3日、4日の20471円から6日は20492円、7日に20497円まで上昇し、厚くなる。雲がそれほど接近していることをぜひ意識したい。なお、8月は14日のマイナーSQ日に雲がねじれ、24日にもう一度ねじれる。「三日新甫の波乱」はその時に起きるのだろうか?
ボリンジャーバンドは、20085円の25日線-1σと20654円の+1σの間のニュートラルなゾーンにあるが、+1σまであと69円という上寄りに位置している。
オシレーター系指標は、全て「買われすぎ」でも「売られすぎ」でもないニュートラルな数値。25日移動平均乖離率は+1.0%、騰落レシオは97.9、RSI(相対力指数)は69.5、RCI(順位相関指数)は-47.6、ストキャスティクス(9日・Fast)は51.3、サイコロジカルラインは7勝5敗で58.3、ボリュームレシオは66.1である。
ボリンジャーバンドもオシレーター系指標も上にも下にも動きやすいことを示しているが、今週は日足一目均衡表の「雲」の下支え効果が、移動平均線3本の「筋金」が入ったのに加え、7月31日時点の上限20471円が6月のメジャーSQ値20473円とほぼ重なったことで、いっそうパワーアップするとみる。前週の東京市場をさんざん悩ませた上海市場の急落リスクが北京冬季五輪の決定で、解消とまではいかないが当分はご祝儀もあっておとなしくなるとすると、日経平均の下値を20450円としても差し支えないだろう。
一方、上値はボリンジャーバンドの25日線+1σ(20654円)をやすやすと超えて、+2σ(20939円)を突破する「21000円チャレンジ」の局面もあるとみる。2年前の東京五輪決定の時もそうだったが、オリンピックの株式市場への影響度は非常に大きい。日本開催ではなくても、日本企業にとってきわめて大きな市場である中国で開催される。2008年の北京夏季五輪の経済効果約15兆円に対して1998年の長野冬季五輪の経済効果が2兆3244億円という数字を持ち出して「大した経済効果はない」という言説が出てきそうだが、たとえ2兆円でもゼロとは全く違う。
というわけで、今週の日経平均終値の変動レンジは20450~21000円とみる。
夏枯れの8月の日経平均の月間騰落は2010年以来5年連続マイナスだが、7月31日夜、「2022年北京冬季五輪開催決定」というニュースが飛び込んだ。この夜はちょうど満月だったので、兜町の業界人に少なくない〃マーケット天文主義者〃たちは、満月の贈り物で月も変わればツキも変わり、「8月相場はステージが変わる(買い場がくる)」と吹聴しているかもしれない。だが、海釣りが趣味ならともかく、投資家で月の満ち欠けを気にしている人はいったい何人いるのだろう? 「あと何回満月を眺めるか? せいぜい20回だろう。だが、人は無限の機会があると思い込んでいる」(ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』)(編集担当:寺尾淳)