高齢化が進むにつれて、エイジングケア市場が活性化している。総務省が公表している国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口は2010年をピークに減少をはじめており、2020年には1億2,410万人、2030年には1億1,662万人、2050年には1億人を割り込む。その一方で65歳以上の高齢者率は上昇しており、2060年には全国民の約40%にまで達することが推測されている。
とはいえ、最近の60代、70代の高齢者は、年齢こそ高いものの、一昔前の「お年寄り」とはずいぶん異なる若い印象がある。実際、日本老年学会は65歳以上の高齢者の身体、知的機能や健康状態についての分析結果を6月に発表しているが、その結果から「現在の高齢者は10~20年前に比べて、5~10歳は若返っていると想定される」と評価している。
生活習慣に対する意識の向上や、趣味やスポーツなどで活き活きとした生活を送っていることなどが「若返り」の大きな理由と考えられるが、女性の場合はとくに、アンチエイジングスキンケア製品の充実も大きく関係していることは間違いないだろう。高齢化社会に伴って、大手化粧品メーカーだけではなく、異業種からの市場参入も目立つようになり、様々な方面から、新しい成分開発や研究による効能効果が裏付けされて、エイジング効果の高いスキンケア製品やサプリメント、美容器具等が続々と登場している。
中でも、エイジングケアに積極的なのがミツバチ産品の製造販売でしられる山田養蜂場だ。同社ではローヤルゼリーやプロポリスなどのミツバチ産品を中心に、食からの健康とエイジング対策について、数多くの研究を行っているが、同社が6月に発表した千葉大学大学院との共同研究では、イドネシア原産の裸子植物で、現地ではこれまで一般的に常食されてきた食材「メリンジョ」が、皮膚細胞の増殖や抗酸化作用により皮膚の薄化を防止することで、皮膚の老化予防が期待できることを報告している。この研究結果は学術誌“Oxidative Medicine and Cellular Longevity”でも発表されており、今後の美肌、エイジングケア市場に一石を投じそうだ。
年齢を重ねると、皮膚の新陳代謝が低下し、表皮や真皮層の厚みが失われてしまう。これが肌の薄化だ。薄化が進むと、肌の弾力が低下するなどの変化が起こり、しわ、しみ、乾燥、傷の治りが遅くなるなどの原因になる。しかし今回、共同研究者の千葉大学大学院医学研究院の清水孝彦准教授によると、メリンジョを日常的に摂取することによって、皮膚細胞の増殖や老化遺伝子の発現調節が起こり、コラーゲン生成や抗酸化作用が促進され、皮膚の薄化が予防できることが明らかになったという。
インドネシアのカリマンタン島(旧ボルネオ島)では、メリンジョのことを「生命の樹」と呼んで、昔から栄養価の高い食材として認知していたという。日本ではこれまで、あまり耳にすることの無かった食材だが、実や葉はスープに利用したり、種子は乾燥させて油で揚げたりと、レパートリーも多いようだ。また最近では、サプリメントの成分としても注目が高まっている。今後、メリンジョの名を耳にする機会が増えそうだ。(編集担当:藤原伊織)