【今週の展望】遠くの2万円よりも近くの需給バランスの修復

2015年09月06日 20:24

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日経平均は2万円台ワールドから17000~18000円台ワールドに「プチ・パラダイムシフト」した。状況に合わせて、頭を切り換える時。

 「二番底」という言葉がある。大きく下落して「一番底」をつけて、いったん回復した後に再び大きく下げること。だがその場合、二番底の株価は一番底ほど安くなく、その手前で止まる。ところが今回は8月25日(終値)、26日(ザラ場)の直近の安値(一番底)を4日に更新してしたから、もはやこれは二番底ではなく、一番底の更新だ。チャートパターン分析の古典「酒田五法」でいう「逆三尊底(ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム)」の、真ん中のご本尊を製作中である。

 今週は、その一番底の更新がさらに続くと予想される。4日のNYダウの反落、1週間で2円以上も進んだ円高ドル安、改善の兆しが見えない需給バランスの悪さ、国内経済、世界経済への漠然とした不安、メジャーSQ週であることなど、その根拠を挙げだしたらキリがないが、そこでは小さいながらも「東京市場の構造の転換(パラダイムシフト)」すらも、読み取れる。

 歴史に「もし」が許されるなら、前々週あるいは前週前半にもし、政策など何かをきっかけに日経平均が2万円を回復していたら、状況は全く変わっていただろう。それは「8月危機の短期収束」を意味し、何もかも元通りに修復され、日経平均の「2万円台ワールド」は続いていたことだろう。

 直近ほぼ1年間の東京市場は、大きく落ち込んでも短期収束ですぐ元通りになるパターンを繰り返してきた。昨年8月8日に454円安を喫した時は、翌週に5連騰で539円上昇して全値戻し。昨年10月に15000円割れを喫した時は、31日の黒田日銀総裁からの「突然の贈り物」で短期収束。今年に入っても1月、3月、4月、5月にあった調整局面はいずれも1~2週間で元に戻り、7月8、9日に1000円近く急落して19115円の安値をつけた際は、2万円台への復帰までたったの2営業日しかかからなかった。

 前週までの「今週の展望」で2万円回復の見通しを外せなかったのは、トカゲの尻尾を切ってもすぐに生えてきて元通りになるような「東京市場・早期回復伝説」が、どうしても捨てきれなかったからである。

 だが、伝説も終わりの日がやってきた。それは完膚なきまでに徹底的に覆された。早期の2万円台回復がならなかったことで、2万円台の回復は最低でも今年いっぱいか、あるいはもっと先になるかもしれない。2年前の「5.23」の大暴落後、それを乗り越えるまで半年以上かかったことが思い出される。

 7月14日から1ヵ月以上、日経平均は2万円を一度も割り込まず、8月20日の終値は20033円だった。その2営業日後の24日の高値は19154円で、それ以来、日経平均の高値は一度も19200円を突破せず、終値で19000円を超えたのは8月28日の1回だけである。一方、安値のほうは8月26日に17714円、9月4日に17608円まで下げている。チャートを見れば、8月20日以前の「2万円台ワールド」と、24日以降の「17000~18000円台ワールド」の間で、200日移動平均線をはさんだ「パラダイムシフト」が起きたことがわかる。その転換は、8月21日と24日の、わずか2日間で成し遂げられた。

 とはいえ、中国の金融マーケットが変調をきたして世界同時株安に陥ったこの出来事をパラダイムシフト(構造の大転換)と言ってしまうのは、いささか大げさすぎる。世界大恐慌やベルリンの壁の崩壊、リーマンショックのような〃大先輩〃にも失礼だ。そこで、「プチ(petit(e))」という、ほとんど日本語化したフランス語の形容詞をつけて、「プチ・パラダイムシフト」と呼ばせてもらう。

 ポスト・プチ・パラダイムシフトの日経平均「17000~18000円台ワールド」の変動レンジは17000~19000円で、少なくともこの秋の間はこの内部で動くだろう。「2万円ワールド」よりもボラティリティが大きく、チャート上で実体もヒゲも長いローソク足が浮いたり沈んだりして忙しいが、今週はその下の方での値動きになりそうだ。このワールドでも、需給、ファンダメンタルズ、テクニカル指標の分析で市況を予想するしかないが、移動平均や一目均衡表などのテクニカル指標は〃下界〃に降りてくるまで「2万円ワールド」のスタンダードの影響が残るので、それを割り引いて考える必要はあるだろう。

 まずは需給。東証が3日に発表した8月第4週(8月24~28日)の投資部門別株式売買動向によると、外国人は3週連続の売り越しで売越額は7070億円。個人は3週連続の買い越しで買越額は4277億円。信託銀行は2週ぶりの買い越して買越額は2631億円だった。外国人の売越額は8月後半の第3、4週の10日間で約3兆円に達し、8月トータルでは約2兆5000億円にのぼった。8月は外国人が売って、売って、売り尽くした月で。その結果、8月28日の裁定買い残は2週連続減で2.2兆円まで減少した。しかし信用倍率は5.95倍で1年4ヵ月ぶりの高水準になった。前週のカラ売り比率は、8月31日が39.5%、1日が41.0%、2日が40.6%、3日が41.0%、4日が41.6%で、カラ売りのショートカバー(買い戻し)など全然起きないまま、史上最高を2度も更新している。