産業用無人ヘリコプター事業で日本を代表するヤマハ発動機は、これまで日本国内の農業向けに2,700機の販売実績があるが、今年5月にアメリカで認可を受けたことを機に、米国に拠点を設置し、農業以外の分野も含め、積極的な海外展開を行うことを計画している。
昨今、何かと話題の小型無人航空機(UAV)「ドローン」。空撮や輸送などの目的で導入する民間企業や団体なども増えており、活用の幅が拡がっている。
「ドローン」には自律航行が可能なタイプと、常に無線で遠隔操縦する「無人ヘリコプター」タイプの大きく2種類がある。どちらが優れているというものでもなく、用途や使用場所などによって使い分けられているが、共通して言えることは、墜落事故や接触事故の防止など、安全面での対策が急がれているということだ。
市場調査会社のシード・プランニングがまとめた調査に結果によると、国内のドローン市場は、2015年に16億円、東京オリンピックが開催される2020年には186億円にまで成長すると予測されている。しかも、2020年以降もさらなる市場拡大が続くとみられており、2022年には400億円を超えると見込まれている。また、ドローンは現在、7割以上が農薬散布用として利用されているが、火山への地震計設置や放射線量モニターなどの用途が年々拡大しており、今後はますます整備・点検、測量などの市場で需要が拡大していくことだろう。
産業用無人ヘリコプター事業で日本を代表するヤマハ発動機<7272>は、これまで日本国内の農業向けに2,700機の販売実績があるが、今年5月にアメリカで認可を受けたことを機に、米国に拠点を設置し、農業以外の分野も含め、積極的な海外展開を行うことを計画している。
同社では、需要の拡大に伴って、安全対策にも力を入れている。同社は水稲防除における無人ヘリの実用化を1989年に開始して以来、25年以上に渡って、姿勢制御装置や高精度のGPSを搭載するなど、ハード、ソフト両面からの安全対策を進めてきた。同社の担当者曰く「無人ヘリ普及の歴史は、安全普及の歴史」。そうした安全普及活動の一環として、同社では昨年、新型機「FAZER」の開発に用いたソフトをベースに、オペレーター教習用のシミュレーターを開発している。このシミュレーターには、同社が培ってきた安全普及のノウハウが凝縮されており、舵の反応や動きが実際の無人ヘリとまったく同じであることはもちろん、これまで実際に発生した緊急事態のケースを再現し、機体がコントロールを失った際の操作なども体験することができるという。
同システムは、すでに全国の特約店や農業大学校などにも導入が進んでおり、無人ヘリの安全利用に貢献している。
ドローンはこれからの社会全体に大きな影響と発展をもたらすものであることは間違いない。しかし、そのためにはまず、安全に利用できることが第一だ。安全な機体と安全なシステム。そして、それを扱う人間の安全意識と操作技術が何よりの安全対策になるだろう。(編集担当:藤原伊織)