今週は日本時間で4日夜のアメリカの雇用統計待ちの様子見は出るものの、ヨーロッパ経済に好影響を与える3日のECBの追加緩和はほぼ決定的。同じ日、イエレンFRB議長は議会証言を行い、為替のドル高円安に結びつく次回FOMCでの利上げをほのめかすかもしれない。国内でも前週に「TPP」「一億総活躍」の関連政策が発表されたから、これから年末まで補正予算の編成に入り、政策期待が盛り上がってくる。無理しなくても、日経平均は自然体で「2万円台ワールド」に押し上げられても全然おかしくない。その時期が早いか、遅いかという問題である。
たとえて言えば、飛行機は「2万円」に着陸まぎわ。到着する空港の管制塔の指示で上空で旋回しているが、天候は晴れ、視界は良好、燃料は十分あり、機体も異常なし。必ず着陸できる。引き返したりはしない。それなのに2万円到着が遅れているのを「日銀のせいだ」「黒田さんのせいだ」と機内でわめいている一部の乗客は、後で空港警察に身柄を引き渡していい。
前週はたった4円高とはいえ週間騰落プラスは6週連続で、日経平均は10月16日終値の18291円から11月27日終値の19883円まで1592円も上昇した。その間の星取は20勝8敗、勝率7割1分4厘というハイペース。少々ペースダウンしても大勢に影響はない。その27日終値19883.94円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、移動平均線は5日線の19896円だけが上にあり、19409円の200日線、19368円の25日線、18867円の75日線は、全て下にある。
日足一目均衡表の「雲」は17967~18924円。今週の雲の上限は12月3日まで18924円で、4日は18802円に下がる。下限は11月30日の18122円から12月1~3日の18209円、4日の18289円と上昇して、雲の厚さは若干薄くなる。しかし27日終値は959円も上空にあるので、次に日足一目均衡表の影響を受けるとすれば12月11~12日の「雲のねじれ」だろうか。ボリンジャーバンドでは、27日終値は25日線+1σの19821円と+2σの20275円の間にあるが、その領域の下に寄ったところ。ちなみに25日線-1σは18915円で、雲の中にある。
オシレーター系指標はいまだに「買われすぎ」シグナルが派手に点灯している。25日移動平均乖離率は+2.6%で買われすぎラインの+4%も+5%も遠く離れた。サイコロジカルラインも前週の2敗で8勝4敗、66.7%になって買われすぎラインの75%を下回った。しかしそれ以外は、騰落レシオは122.0で120を超えて買われすぎ、RSI(相対力指数)は70.6で70を超えて買われすぎ、RCI(順位相関指数)は+75.5で+50を超えて買われすぎ、ストキャスティクス(9日・Fast/%D)は87.7で70を超えて買われすぎ、ボリュームレシオは72.6で70を超えて買われすぎ。もっとも騰落レシオ、RSI、ボリュームレシオは買われすぎラインを少し超えているだけで、今週、現状のまま時間が経過すれば半数のシグナルが自然消滅する。「バリバリの買われすぎ」という状況ではない。
次に需給のデータを確認すると、最も特徴的なのは11月20日時点の現物裁定買い残だろう。9月25日(2兆707億円)から8週連続で増加する間に1兆4947億円、72.1%も上積みされ、総額3兆5654億円で6月5日以来、約半年ぶりの高水準に達した。しかも、日経平均が4勝1敗、282円高だった11月13~20日の週には、裁定買い残は5341億円という今年最大の大幅増をみせている。
裁定買い残が積み上がると日経平均には上昇のエネルギーが補給される。エネルギー源は5週連続で買い越した外国人(海外投資家)で、東証発表の投資主体別株式売買状況によると、11月13~20日の週に2447億円買い越している。その売り手のカウンターパートナーを演じている個人投資家は8週連続、4261億円の売り越し。信託銀行は1556億円で4週連続の売り越しだった。
信用倍率は、11月20日時点で4.22。4.85だった10月30日から4週連続で低下しており、9月4日のピーク6.18に比べると31.7%も低くなった。一般に、信用倍率が減少すると売り圧力が低下し、上昇しやすくなる。カラ売り比率も前週は33.2~35.1%で、一時のアブノーマルな40%台は影をひそめた。
需給データは総じて言えば「上がりやすく、下げにくい」状況が続いている。それが前週までの日経平均2万円を目指した6週連続週間騰落プラスのエンジンになっている。そのエンジンは「延長戦」の今週もまだ回ってくれる。だから今週、2万円タッチを予想して上値の目安は20100円。そして、前々週までレジスタンスラインだった19700円が引き続き下値サポートラインになる。前週、2万円にタッチできなかったから、前週の予測と全く同じ。「延長戦」だから、そうなる。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは19700~20100円とみる。
前週、日経平均は2万円まであと10円以内に接近したチャンスが4回もあったが、全てアタックに失敗し、2万円に一度もタッチできずに週を終えた。キリの良さで先物・オプションのポジションが集中しているためレジスタンスラインになりやすい心理的節目とはいえ、こんなことは珍しい。「詰めの甘さを見て、身につまされた」と思っている人がいるかもしれないが、失敗から学べることは数多い。「優れた人が優れているのは、失敗を通して叡智にたどり着いたからだ。成功から学ぶものなど、たかが知れている」(ウィリアム・サロイアン)