【今週の振返り】2万円台を一時回復したが379円下落した週

2015年12月05日 20:32

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それは「神の手」のお導きかと思わせた「約束の地」日経平均2万円タッチ。だが、マリオ・ドラギは2万円定着を許さず、荒れ野に押し返された。

 3日の日経平均は小幅反発。ユーロ圏の11月の消費者物価指数(CPI)速報値は+0.1%と不振でECBの追加緩和観測は高まったが、ヨーロッパ市場はDAXもCACもマイナス。FTSEはプラス。NYダウは158ドル安でNASDAQもS&P500も下げた。FRBのベージュブック(地区連銀経済報告)は前回と同じく全地域で緩やかな拡大基調。ADP雇用統計の非農業部門雇用者数は+21.7万人と好調。7~9月期の労働生産性指数も年率換算前期比+2.2%で速報値から上方修正。「雇用は心配なし」とイエレンFRB議長も判断したのか講演で今月中の利上げを示唆した。

 そのため、午前中は前日終値付近で小動きしたダウは午後、下げ足を強め、マクドナルド発祥の地(シカゴ説もあり)のカリフォルニア州サンバーナディノで銃乱射事件が起きてさらに下落した。アメリカ長期金利は上昇し為替はドル高になるという教科書通りの反応。原油先物価格の8月以来の40ドル割れも相場を冷やした。金先物価格もドル高を嫌気して大幅続落し、5年10ヵ月ぶりの低水準に沈んだ。為替のドル円は123円台前半、ユーロ円は130円台後半。CME先物清算値は19870円だった。

 前日発表のファーストリテイリング<9983>の11月の国内ユニクロ既存店売上高は8.9%減と悪かった。寒くなるのが遅すぎた? 日経平均は19900円を割り込み43円安の19894円で始まる。TOPIXは1600台で始まり1600前後の小動き。日経平均はほどなく19900円台を回復する。しかし序盤は「コップの中の嵐」ながらマイナス圏で乱高下。午前9時11分に19928円をつけた後、19900円をまた割ったかと思えば9時40分に19925円付近まで上昇する。TOPIXは一時プラスになった。10時前にプラスにタッチし、10時15分に19941円の高値をつけるが、上海市場がマイナスで始まるとズルズル下落していき、11時1分に19862円まで下げる。それでも落差は79円。上海はプラスに転じ、11時台は19880~19900円の間でアップダウンし前引けは43円安の19894円だった。TOPIXもマイナス。

 上海市場はプラスを維持したまま午前の取引を終える。後場の日経平均は前引けの少し下の水準で再開する。このところ連日そうだが後場は前場よりも値動きが小さくなる。11時台と同じで午後0時台は19880~19900円のレンジで徐々に値を上げ、1時台は19900~19910円のレンジで小動きしていたが、2時前にひと伸びしてTOPIXとともにプラスにタッチ。上海市場は小幅プラスで再開。2時台もなお上昇が続き、高値を更新しながらプラス幅をひろげ、2時18分に19967円まで上がる。きっかけとして考えられるのが4日のOPEC総会を前にして「サウジが減産検討」というウォールストリートジャーナルのニュース。原油価格上昇を見込んで再編まっただ中の石油元売りや資源価格の業績への影響が大きい大手商社が買われた。上海が少し下落したこともあり、その後はおおむね19950~19960円付近で小動きするが、終盤の大引け直前に売り込まれて1.77円高の19939円で終えた。「約束の地」2万円に一度もタッチできず、かろうじてプラスで踏ん張っても反発は反発。TOPIXもわずかなプラスで3日続伸。上海総合指数は1.35%のプラスで4日続伸していた。

 新規IPOが1件。土地情報の提供、デザインアパートの企画、施工、賃貸管理などを手がけるインベスターズクラウド<1435>が東証マザーズに新規上場した。公開価格1870円に対し0時56分、93.3%高い3615円の初値がついた。その後は下げて終値は2920円。公開価格で計算した資金吸収金額が21億円と多いため。

 日経平均終値は1.77円高の19939.90円、TOPIX終値は+0.68の1602.94。売買高は18億株、売買代金は2兆1139億円。値上がり銘柄数785よりも値下がり銘柄数974のほうが多い。それでも21業種がプラスで、上位は石油・石炭、鉱業、保険、金属製品、水産・農林、食料品など。12業種がマイナスで、下位は電気・ガス、サービス、パルプ・紙、繊維、小売、陸運などだった。

 4日の日経平均は大幅反落で「約束の地」2万円から496円も遠ざかった。世界の金融マーケットを「やるやる詐欺のドラギ・ショック」が襲う。ECB理事会の決定は、ドラギ総裁がデフレ回避のためにやる、やると繰り返し言及した追加緩和は行うものの、銀行のECB預入金利を-0.1ポイント下げて-0.3%とし、量的緩和の買入対象に地方債を加え期限を2017年3月まで延長しただけ。〃本丸〃の買入枠は600億ユーロのまま据え置かれ、政策金利も変わらなかった。大山鳴動してネズミほど小さくはないが、ネコ一匹ぐらい。

 中途半端な政策でお茶を濁す裏切り者をマーケットは容赦しない。ヨーロッパ市場は軒並み大幅安。NYダウは午後に下げ足を強め252ドルの大幅続落でNASDAQもS&P500も大幅安だった。ISM非製造業景況指数も-3.2の55.9で、50は割らなかったものの市場予測を下回る。イエレンFRB議長の連邦議会上下両院合同経済委員会での議会証言は、雇用が好調で経済は堅調と強調し今月中の利上げを示唆したが、その影響は限定的だった。アメリカ長期金利は上昇。原油先物はOPEC総会をにらんで上昇。金先物はドル高がドル安に転じて大幅反発した。為替のドル円は122円台半ばまでドル安円高が進行し、ユーロは反発してユーロ円は134円台前半。CME先物清算値は19545円だった。

 ドラギ・ショックの地球周回を「太平洋の防波堤」になって止められるか注目の東京市場。日経平均は323円安の19616円の大幅安で始まる。TOPIXも大きく下げて1576台でスタート。午前9時3分に11月17日以来の19600円割れを喫しても、安値は19595円で25日移動平均の19578円に支えられる。9時8分に19660円まで上昇した後、9時20分に25日線を割って19558円まで下げるが一時的で、序盤は19600円を少し下回る水準で推移する。アメリカ雇用統計待ちムードで10時台もパッタリ動かなくなるが、10時16分には19553円の安値をつける。

 10時30分に発表された10月の毎月勤労統計調査の実質賃金指数は0.4%増、1人当たりの現金給与総額は0.7%増で、ともに4ヵ月連続で伸びた。しかし所定内給与は0.1%増で伸びは緩慢。その要因はパート収入の減少で、データは政府の「一億総活躍社会」関連政策に盛り込まれた最低賃金引き上げの必要性を示す。上海市場は大幅安で始まるが、下げ幅を徐々に圧縮する展開に安心したのか日経平均は19600円を少し上回る水準で安定し、売り込まれる動きはない。上海は-1%前後で低迷する。それでも11時台は19600円から下放れして25日線を割り込み、前引けは363円安の15556円だった。