生命保険の未払いが20億円 高齢化で「未請求」多発

2015年12月20日 15:14

画・生命保険の未払いが20億円 高齢化で「未請求」多発

保険金の請求にはさまざまな書類が必要だ。住民票や戸籍抄本は役所に取りに行けばいいが、保険証券や保険料の領収書は自分たちで保管しておかなくてはならない。

 生命保険各社が昨年から今年にかけて行った調査で、衝撃の事実が判明した。本来支払うべき未払いの保険金が計約20億円もあったことが確認されたのだ。

 保険業界では、支払いを不当に拒む不払いが2005年に社会問題となり、行政処分を受けるまでに発展した。しかし今回あらわになったのは、保険金の請求自体がなされていないパターンだ。

 その原因は主に「受取人が死亡しているケース」と「受取人が保険加入を知らないケース」の2つで、高齢化が背景にある。契約者自身が高齢で寝たきりになったり、認知症になったりして保険会社の担当者との連絡が途絶えるケースもある。

 太陽生命保険<8795>は昨年の7月から自宅訪問や電話による調査を始めたが、約60万人いる70歳以上の契約者のうち約9万人と連絡がつかなかった。富国生命も70歳以上の契約者や被保険者約12万7000人を対象に調査したが、連絡がとれない人は約1600人に上った。

 「20億円」は各社が調査で把握できた未払い額で、大半は契約者を追いかけて既に支払い済み。しかしほとんどの保険会社は調査の対象を90歳以上としているため、まだ顕在化していない未払い金があることが予想される。

 生命保険は、請求しない限り保険金や給付金が支払われることはない。その請求手続きは保険会社に連絡することから始まる。その後送られてきた保険請求書に保険証券や被保険者の住民票、受取人の戸籍抄本など必要書類を添えて返送する。そのため受取人となる家族は、最低でも保険会社名だけは知っておく必要がある。そして保険の「時効」は3年で、これを過ぎてしまうと保険金を受取る権利が消滅してしまうので注意が必要だ。

 明治安田生命福祉研究所の調査によると、万が一の時に支払われる生命保険金額を知っている人は 40~60 代の3人に2人(65.4%)だった。40 代約53%、50 代約65%、60 代約78%と年代が上がるほど割合は高くなっていくが、日ごろから意識していない人も多いことを裏付ける結果となった。

 自分が死んだ後、残される人のために加入するのが生命保険だ。きちんと保険金を受け取ることは、自分たちを気遣ってくれた故人の「思い」も受け取ることになるのではないか。自分も家族も元気なうちに、加入状況を確認しておこう。(編集担当:久保田雄城)