【今週の振返り】日米中央銀行イベントに揉まれ243円下落した週

2015年12月19日 20:31

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FOMCの利上げ決定への東京市場の反応は、303円高で大幅続伸。日銀の「プチ緩和」への東京市場の反応は、日中値幅886円の乱高下の末に366円安。

 日経平均終値は303.65円高の19353.56円、TOPIX終値は+23.99の1564.71。売買高は22億株、売買代金は2兆7809億円で売り買いに活発さが戻ってきた。値上がり銘柄数は1589、値下がり銘柄数は251。32業種がプラスでその上位は水産・農林、不動産、食料品、陸運、保険、電気・ガスなど。マイナスは鉄鋼1業種だけだった。

 18日の日経平均は乱高下の末に3日ぶり大幅反落。ドイツのIFO企業景況感指数は予想外の前月比マイナスだったが、ヨーロッパの株式市場は揃って3日続伸した。しかしNYダウは253ドル安で前日の上昇分を全て打ち消した。プラスだったのは取引開始時だけで、終了間際はクリスマス前のポジション調整もあり売り込まれた。NASDAQもS&P500もマイナス。原油先物価格は2009年2月以来の終値34ドル台と低迷した。FRBの利上げでアメリカの商業銀行は一斉にプライムレート、預金金利、ローン金利の引き上げに動いた。好調なアメリカの自動車販売は原油安でガソリン価格が安く抑えられても、ローン金利の負担増で陰りが出る可能性がある。

 アメリカの7~9月期の経常収支は赤字が11%も拡大。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数も市場予測を大きく下回る-5.9で3ヵ月ぶりの低水準。それでもCB景気先行総合指数は+0.4%で市場予測を上回り、新規失業保険申請件数は1.1万人減の27.1万人で雇用は相変わらず好調。アメリカの長期金利は低下したが、金先物価格は利上げとドル高で大幅安になり2009年以来の安値圏。為替のドル円は122円台後半、ユーロ円は132円台後半。CME先物清算値は19230円まで低下した。

 前日まで2日間で787円上昇した日経平均は33円安の19320円で始まる。TOPIXも小幅マイナスでスタート。午前9時11分に19357円のプラスになる時間帯もあったが、序盤はおおむね19320~19340円の小幅マイナス圏で推移する。しかし9時40分頃から急速に下落するゲリラ急落勃発。災害と同じで忘れた頃にやってくる。120円を超える下落で9時58分に19199円まで下落した。利益確定売りの金曜日で、しかも来週は欧米はクリスマス週間なのでポジション手じまいの売りが出やすい。日銀会合の結果発表前だが今回は金利敏感セクターへの妙な買いも入らず、銀行も不動産もマイナス。利上げを決めたFOMCの直後でもあり、アメリカと金融政策が逆方向になり金利差が拡大してしまう追加緩和はやはり望み薄。10時台に入るとおおむね19230~19270円のレンジで動く。上海市場はマイナスで始まるが、前日終値をはさんでプラスとマイナスを行ったり来たりでせわしない。11時台の日経平均は上海の上昇に引っ張られ19300円を超えて値を戻し、前引けは46円安の19307円だった。TOPIXは1560まで戻っていた。

 上海市場は東京市場が昼休みの間に急転直下、マイナス圏まで落ちて午前の取引を終えた。マーケットの一寸先は闇。日経平均の後場の取引はプラス圏の19356円で始まるが、直後にマイナスに沈む。TOPIXは最初からマイナス。日銀会合の結果がなかなか出てこないので、19400円前後の水準で息を殺して待つ。午後0時50分、日銀の金融政策決定会合の結果発表。「金融政策現状維持」の第一報にいったんマイナスに沈むが、その直後から棒上げ開始。あれよあれよと5分間で500円以上も急騰し、0時55分に516円高の19869円まで達する信じがたい上昇ぶり。何が起きたかというと、日銀会合の結果第二報で伝えられた「異次元緩和の補完措置」の導入決定で、ETFの3兆円の買入枠を1割増量して3000億円が追加された。J-REITの買入枠総額はそのまま。買い入れ国債の平均残存年限は2016年から7~10年程度から7~12年程度に変更される。文字通りの「プチ緩和」だが、マーケットはかなりの過剰反応。為替のドル円は123円台半ばまで円安進行。TOPIXは1600寸前、先物は19880円まで上昇し、このまま2万円タッチもあるかと思いきや、日銀の発表文に追加分と同額の3000億円分の保有株を売却するなどの交換条件がついていることがわかると、たちまち利食い売りの餌食になってどんどん下落し、1時31分に19192円まで下がった。ドル円も122円台前半の元のサヤに収まった。

 「日銀プチ緩和・乱高下劇場」の後はシラケムードが漂う。19300円付近まで戻したかと思えば、上海市場がプラスに戻して再開したのに一段安し2時7分に19173円まで下落。まるで1時間前にはしゃぎすぎた罰を受けているかのよう。それに経済指標の悪化が追い討ちをかける。2時に発表された11月の粗鋼生産量は4.7%減で15ヵ月連続のマイナス。2時30分に発表された11月の全国百貨店売上高は2.7%減で8ヵ月ぶりのマイナス。これはインバウンド消費伝説の終焉か? 上海市場が再びマイナスに転じた2時台後半には19000円も割ってしまう。マーケットの一寸先は闇で、日銀発表直後5分間の出来事は、まるで昼下がりの蜃気楼のよう。終盤は上海がプラスに戻っても19000円前後でくすぶり、2時59分に18982円の安値をつけ、終値は366円安の18986円で3日ぶりの大幅反落。日中値幅はなんと886円もあった。TOPIXは安値引け。上海総合指数は結局、0.02%の小幅安で終了していた。

 新規IPOが3件あった。プリントシール機、クレーンゲーム景品、ネットコンテンツ・メディア、家庭用ゲーム機やスマホ向けゲームの企画、開発、販売、運営を行うフリュー<6238>が東証1部に新規上場。公開価格3200円に対して9時0分、20円、0.6%高い3220円の初値がついた。オムロン<6645>からMBOで独立し「カワイイ」を追求する「女子力」を味方につけて成長したが、ギリギリの白星デビュー。

 マルウェア対策、ウィルス対策など情報セキュリティ製品の開発・販売を行うアークン<3927>が東証マザーズに新規上場。大引けまで初値がつかず、公開価格1360円の2.3倍の3130円の買い気配で終了し、初値を来週に持ち越した。種苗の輸入販売、生花の生産・卸売を行うアートグリーン<3419>が名証セントレックスに新規上場。公開価格420円に対して10時30分、46.1%高い614円の初値がついた。

 前日にジャスダックに新規上場して初値がつかなかったミズホメディー<4595>は9時23分、公開価格1100円の2.56倍の2822円の初値がついた。これで新規IPOは11連勝で12月は黒星も引き分けもまだない。新規IPOは来週も7件予定されている。

 日経平均終値は366.76円安の18986.80円、TOPIX終値は-27.61の1537.10。売買高は29億株、売買代金は3兆5971億円で、「乱高下劇場」のおかげでメジャーSQの前週11日を大きく上回り、8月26日以来4ヵ月ぶりの大商い。値上がり銘柄数は後場1000を超えた時間帯もあったが279、値下がり銘柄数は1578。全33業種がマイナスで、下落幅が小さかったのは医薬品、鉄鋼、水産・農林、空運、精密、サービスなど。下落幅が大きかったのは石油・石炭、保険、パルプ・紙、証券、機械、鉱業などだった。

 今週の星取は2勝3敗。前週末11日の終値19230.48円から243.68円下落して、日米の金融政策決定イベントを通過した今週の取引を3週連続のマイナスで終えた。1週間のザラ場の最高値と最安値の値幅が1306円という乱高下を演じた週だった。(編集担当:寺尾淳)