【2016年の展望】LCC生き残り合戦 カギ握る「台湾線」と「その後」

2016年01月01日 14:23

画・【2016年の展望】LCC生き残り合戦 カギ握る「台湾線」と「その後」

ピーチが拠点としている関西国際空港は24時間体制。ピーチはこれを最大限に活かした徹底的な効率化で、低価格でも収益を確保することに成功している

 国内第三極のスカイマークの民事再生法適用申請という大ニュースで幕を開けた2015年の航空業界。同社はANAの支援を受けて9月に経営陣を刷新、再建に向けて動き出した。その影でLCC(格安航空会社)各社は訪日外国人急増の効果もあり、順調に数字を伸ばした、比較的穏やかな年となった。この好調は来年も続くのか。各社の動向を見てみよう。

 まずは関西国際空港(関空)を拠点とするピーチ・アビエーション。16年3月期中間決算の売上高は約240億円、営業利益は約40億円で、3期連続の黒字はほぼ確実。ことし8月には羽田空港発着の台北線を開設。深夜早朝便ではあるが、実は羽田に国内LCCが乗り入れたのはこれが初めてで、好調を裏付けた。3月からは成田空港も増強、そして17年夏までに仙台空港も拠点化する計画だ。

 成田を拠点とするバニラ・エア(旧エアアジア・ジャパン)は16年3月期決算で念願の黒字化を果たす見通しだ。15年10月の搭乗率は9.2ポイント上昇し85.1%。単価が低いLCCに欲しいといわれている搭乗率ライン「80%」を超えた。年末年始(12月25日~16年1月3日)の予約率もピーチとともに80%を超えており、勢いをつけている。

 もうひとつの「成田組」ジェットスター・ジャパン。 15年6月期決算は売上高420億円に対して営業損益は79億円の赤字。前期の111億円からその幅を大きく縮小させた。2月の国際線参入で売上高が前期比44%増の419億円という数字を残せたことが大きい。11月に成田空港、12月に関空と中部国際空港(セントレア)から台北を3路線立て続け開設、巻き返しを図っている。

 16年に見込まれる新しい動きといえば、14年7月に立ち上がった新会社エアアジア・ジャパンだろう。初号機となるエアバス A320型機がことし10月にセントレアに到着。ここを拠点に16年春から札幌、仙台、台北の3路線を稼働させる予定だ。そして同社はことし12月1日付けで代表取締役会長、取締役CEO、CFOの3ポストを揃って新任とした。しかしこの大型人事が波紋を呼び、当初の就航予定が遅れるのではとの予測もある。16年2月には2機目の機材が到着予定で、この2機を「もてあます」事態になれば莫大なコストはもちろん回収できず、一気に採算が合わなくなる危険性が増す。果たしてエアアジアの飛行機はいつ飛び立つのか、注目したい。

 こうして各社の動向を追ってみると、カギとなるのは「国際線」、特に台湾線だと考えられる。国内線よりは高い金額がとれることと、何より「台湾から日本」の需要の高さが背景にある。

 前述のピーチ・ジェットスターに加え、バニラも成田-台北・高雄線を運航する。そして台湾のVエアが12月15日にセントレア-台北線を、タイガーエア台湾も12月19日に羽田-台北線を就航、16年1月に福岡・中部―台北線を開設する予定で、各社でしのぎを削り合うことは必死だ。
 
 では台湾線が飽和状態になった後、次は何が活路になるのか。ヒントになりそうな言葉がある。「安心はANA(全日本空輸)〈9202〉やJAL(日本航空)〈9201〉のようなレガシーが最も誇る部分、そしてLCCが追求している価格の安さ、この間のどっちつかずのいいとこ取りをやっている限り、いずれは埋没してしまう危機感がある(ソラシドエア・高橋洋社長)」。ソラシドはいわゆるLCCではないとされるが、価格や安全性以外の「新たな魅力」を造らなくては、という姿勢はLCC各社にも通じるものがある。

 ことし12月に家電量販大手のビックカメラが春秋航空などを傘下に持つ中国の春秋グループと業務提携したこともその一端かもしれない。中国からの訪日客の「爆買い」需要の取り込みが狙いで、春秋グループの旅行代理店やLCCを利用する訪日客にビックカメラの店舗で使えるクーポンを優先的に配り、売増につなげるものだ。

 また、ジェットスターは10月から一部のコンビニで国際線航空券の直接販売を始めた。同社は13年にローソンを航空運送代理店として、日本初となるコンビニでの航空券(国内線のみ)の直接販売を実施していた。

 このような小売店との連携やチケット発券の利便性向上のほか、例えばシニア向けに特化する、乗り継ぎ客にターゲットを絞る…など、他社にない魅力を打ち出していかないと群雄割拠のこの業界で戦えないのではないか。関空を拠点としているピーチが一人勝ちを続けているのは、その表れといえる。来年以降、各社が独自性をどこまで出してくるか、これも興味深いポイントだ。(編集担当:久保田雄城)