■自動車用品の好調が続き全体の業績を引っ張る
1月28日、自動車用防振ゴム最大手の住友理工<5191>は2016年3月期の第3四半期(4~12月期)決算を発表した。
国際会計基準(IFRS)に基づく連結決算は、売上高は前年同期比7.6%増の3,164億円、営業利益は75.0%増の87.0億円、税引前利益は153.9%増(約2.5倍)の82.8億円、四半期利益は243.3%増(約3.4倍)の25.9億円。最終四半期損益は10.7億円の黒字で、前年同期の3.2億円の赤字から黒字転換している。増収、増益の好調な決算だった。
2016年3月期通期の業績見通し、配当予想に変更はなく、売上高は前年同期比2.2%増の4100億円、営業利益は34.5%増の110億円、税引前利益は55.0%増の100億円、最終当期利益は55.7%増の45億円。最終当期利益は119.1%増(約2.1倍)の25億円。期末配当は前期と同じ9円で、通期の配当額も18円で前期と同じ。第3四半期時点での通期見通しに対する進捗率は、売上高は77.1%、営業利益は79.0%、税引前利益は82.8%、当期利益は57.6%、最終当期利益は42.7%となっている。
セグメント別では、自動車用品分野は北米市場、中国市場で業績が伸び、燃料電池自動車(FCV)のFCスタック向けゴム製シール部材の量産も寄与し売上高が前年同期比9.0%増。営業利益は前年同期に計上したドイツ子会社のアンヴィス社のリストラ費用がなくなったことで150.5%増(約2.5倍)だった。
一般産業用品分野は、中国の景気減速の影響を受けた建設・土木機械向け高圧ホース、中国、新興国でプリンター向け消耗品が販売減に見舞われた事務機器向け精密部品は前年同期実績を下回ったが、鉄道車両用防振ゴム、地震対策用制震ダンパー、集合住宅向け制震装置は堅調で、売上高の落ち込みは1.2%減にとどまった。中国向け生産の稼働率の低下や新規子会社の立ち上げ費用負担などで、営業利益は50.5%減だった。
好調な自動車用品分野が他分野の減収減益を補って、全体の業績が増収増益になっている。
■ヨーロッパでの拡販でパートナー契約を締結
住友理工は中期経営計画「住友理工グループ2015VISION」の中で、「Global Excellent Manufacturing Companyへの飛躍」という成長目標を掲げている。すでに世界23ヵ国に103の事業拠点があり、全従業員の約8割は日本以外の地域で業務に従事してるが、グローバル戦略をさらに推進するために今年1月、JR名古屋駅前の「JPタワー名古屋」内に「グローバル本社」を新設し、業務を開始した。
グローバル本社は、連結経営管理の強化、グローバルに通用する人材の採用・育成を行い、ダイバーシティへの理解を高め、グループ全体の従業員の意識改革を促して、真のグローバル企業を目指す拠点となる。
2015VISIONでは、既存事業は「グローバルでの競争力強化」(自動車用品)、「新興国向け製品の拡充」(IT・エレクトロニクス)、「グローバル拡販の強化」(産業資材)を重点実施項目に挙げている。
そのうち産業資材については、2004年に中国、2011年にインド、2013年に日本(京都府綾部市)に生産子会社を立ち上げ、生産基盤を強化。国内およびアジアのグローバル供給体制を整えた上で今年、ヨーロッパ市場に本格参入する。
1月、産業用高圧ホースの販売について、スウェーデンのHydroscand Aktiebolag社との間でヨーロッパを中心とする43 ヵ国が対象の独占的販売店契約を締結した。ストックホルムに本社がある同社は主に産業用機械、建機向け高圧ホースの最終組立(アセンブリ)、販売、アフターサービスを行っている企業で、このパートナーの185店舗の販売チャネルを通じて、住友理工の高圧ホースの販路はEU域内をはじめヨーロッパ全域にひろがることになる。(編集担当:寺尾淳)