内閣府によると、介護・看護を理由とする離転職者は年間10万人を超える。これを受けて政府は介護休業制度の見直しに乗り出し、介護離職ゼロを目指す方針だ。人材の流出は企業にとっても深刻な問題で、対策を急ぐ必要がある。
介護・看護を理由に離職・転職した人の年齢構成割合(2007年10月?14年9月)は、50?59歳で男性25.5%、女性35.9%、60?69歳で男性43.4%、女性31.5%。男女ともに50代及び60代の離転職がそれぞれ約7割を占めている。中高年層は管理職や経営幹部など、職場で重要なポジションを任されている世代だ。大日本印刷<7912>の井上邦夫労務部長は「休むより働き続けるサポートに力を入れている」と語った。
同社はグループ内の40歳以上の社員を対象に介護に関する調査を実施。その結果、8割の社員が将来的に介護をする可能性があるとわかり、支援の必要性を実感したそうだ。介護休業を366日までとし、特別有給休暇の制定など法定基準を上回る制度を既に設けているが、社員に最も好評なのは「仕事と介護の両立支援セミナー」だという。管理職を対象とした研修、専用相談窓口も設置し、働き続けられるようサポートが行われている。
昨年のことだが、米金融大手ゴールドマン・サックスの日本法人は、家族1人につき年間100時間分の介護サービス使用料金を会社が全額負担するという福利厚生制度を導入した。介護大手のニチイ学館<9792>との契約により、47都道府県で利用できる。介護で平日を休む必要があった男性社員は、同僚に迷惑をかけるから退職するしかないと思い詰めていたが、この制度で会社を辞めずに済んだという。
手厚い資金支援が難しい企業も、職場なりの工夫によっては、介護との両立を大きく支えられるはずだ。
介護離職は金銭面の不安が大きいだけでなく、精神的にも厳しい状況だ。当事者の責任だと突き放さず、社会全体の問題として受け止めたい。(編集担当:久保田雄城)