引退したいのにできない――高齢社長が増える一方で、多くの社長が後継者不足に悩んでいることが帝国データベース(以下TDB)の「後継者問題に関する企業の実態調査」で明らかになった。調査は、2014年以降の後継者の実態について分析可能な28万9,937 社(全国・全業種)を対象にした。
「後継者不在」だったのは全体の3分の2にあたる66.1%で、2014年の前回調査から0.7ポイント上昇していた。社長の世代別にみると、40歳代までは90%前後が後継者不在とした一方、後継者選定が必要となりうる60歳以上の企業でも50.0%が「不在」とし、80 歳以上に限ってみても34.7%が後継者不在だった。
売上規模別にみると、60歳代の後継者不在率は「1億円未満」が70.3%、「1~10億円未満」56.2%、「10~100億円未満」46.6%と規模が大きくなるにつれて下がり、「1000億円以上」では21.7%だった。70歳代も同じ傾向をみせたが、80歳以上では「1億円未満」37.2%から規模が大きくなっても大きく下がらず33、4%で推移し「1000億円以上」では41.7%とアップしていた。
TDBは「後継者不在率は前回や前々回の調査から上昇しており、特に社長年齢が80歳を超える企業でも後継者が不在であるケースもみられ、状況は極めて深刻。政府や各種機関によるきめ細かいサポートはもちろんのこと、経営者自身も安定した事業承継は経営者が負った社会的義務であるとの意識を強く持つ必要があるだろう」と述べている。
一方、「後継者あり」の企業9万8,224社について後継者の属性をみると、「子供」が 38.6%で最多だった。また、前々回調査で16.8%だった「配偶者」は前回、今回と減り続け、今回は8.9%となった。構成比が上昇したのが「非同族」で、前々回調査から5.8ポイント上昇となる32.4%。TDBでは「同族外への承継に際しても利用可能となった『事業承継税制』の導入など政策的な後押しがあったことが要因とみられるが、全体の後継者不在率の改善にはまだ繋がってきておらず、一層のサポート体制が必要」と分析している。(編集担当:城西泰)