富士重、新プラットフォーム開発。効率化狙いの他社とは別のベクトル。まず、次期インプに採用

2016年03月12日 10:26

Subaru Platform

「SUBARU GLOBAL PLATFORM」と呼ぶ、新プラットフォームのカットモデル。バルクヘッド、サスペンションの取り付け部やホイールハウス、Aピラーからリアへとつながるサイドシルの構造などは、共通化や生産性向上のための構造というより、操縦安定性のためのスポーツモデルのボディ&シャシー強化のように映る。まずは、秋に登場のインプレッサから

 3月7日、富士重工業は次世代に向けた共通プラットフォームとして開発を進めている「SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバルグローバルプラットフォーム)」の狙い、具体的な技術に関するリリースを発表するとともに、記者会見を行なった。会見で登壇したのは、代表取締役社長の吉永泰之氏、専務取締役執行役員の武藤直人氏、執行役員の大拔哲雄氏、デザイン部長の石井守氏の4名だ。

 「SUBARU GLOBAL PLATFORM」は、同社が2014年に中期経営ビジョン「際立とう2020」で打ち出した、“スバルブランドを磨く6 つの取り組み”の一環として開発している基幹技術で、富士重独自の「水平対向エンジン」「シンメトリカルAWD」「アイサイト」に続く次世代スバル車を構成する基盤となる技術だという。

 公開にあたり、吉永泰之社長は、「スバルが提供する価値である「安心と走る愉しさ」を進化させ、スバルのクルマづくりを大幅にレベルアップさせた技術のひとつがこの“SUBARU GLOBAL PLATFORM”。これまでの我々のノウハウを詰め込んで、期待に応えられるスバルらしいクルマづくりができると自負している。スバルはこれからも安心で愉しいクルマづくりを加速させ、より魅力的な商品を創造し続ける」と述べ、研究開発費もこれまで年500億円程度から、2015年には、倍の1000億円まで拡大。これを2020年まで継続するとも語った。

 「SUBARU GLOBAL PLATFORM」の特徴は、2025年のクルマ社会を見据えた“高性能を超えた、感性に響く動的質感”と“世界最高水準の安全性能”の両立にある。

 “感性に響く動的質感”を実現するために同社は、性能やスペックの先にある、スムーズさや気持ち良さといった「感性の領域」において、新しい質の高い走りを実現するとした。まず、まっすぐ走れること、次に専門用語でNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)を排除する=不快な振動騒音がない、そして快適な乗り心地を高次元で実現することだという。その結果として、スバルらしい動的質感を徹底的に磨き上げる。

 “世界最高水準の安全性能”の達成のために、効率的に衝突時のエネルギー吸収できフレーム構造の採用やホットプレス成形材などの高張力鋼板採用拡大による車体強度の向上図る。衝突エネルギー吸収率を現行車比で1.4 倍に向上。さらに、2025 年頃においても、さらなる高強度化や材料置換を視野に入れ、世界最高水準の衝突安全性能を実現できるポテンシャルを持つプラットフォームつくるという。

 こうして新しいプラットフォームの概要を聞くと、自動車大手のトヨタやフォルクスワーゲン、日産などが進める自動車開発効率化=経営効率化策としての新しいプラットフォーム開発とは、ややニュアンスが異なるようだ。自動車の基幹となるプラットフォーム共通化による生産性向上を目指すというより、この「SUBARU GLOBAL PLATFORM」構造は、操縦安定性のためのスポーツモデルのボディ&シャシー補強に似ているように思える。

 もちろん、生産効率だって向上する。事実、発表でも「ひとつの設計構想による開発で、限られた開発人員・設備で多様な車種を効率よく開発することが可能となり、そこで得られた経営資源を、さらに商品競争力を強化すべき分野に振り向けることが可能になる。従来は別々の生産設備で製造していた複数車種のプラットフォーム部材が同一の生産設備で製造可能になり、協力企業を含めた生産効率を向上さする」とした。

 また、この新しいプラットフォームは、自動運転車にも対応するのはもちろん、プラグインハイブリッド(PHV)、EVプラットフォームとしても使える設計でもある。このような特徴を持った「SUBARU GLOBAL PLATFORM」は、2016年後期市場投入する次期インプレッサを皮切りに、今後すべてのスバル車に採用する予定だという。(編集担当:吉田恒)