熊本地震の被災者支援や被災地の復旧・復興には今国会での閣法成立に協力する民進党だが、政権交代のきっかけとなった衆院選挙制度改革での「一票の格差是正」と消費税引き上げに関して、国民に約束した国会議員自らが身を切る改革(議員定数削減)では、政権交代からの3年間、安倍政権が抜本改革に本腰を入れてこなかったと、岡田克也代表は28日の衆院本会議で厳しく安倍晋三総理の政治責任をとりあげ、「安倍総理・自民党・公明党は国民に謝罪すべきだ」と求めた。
この与党案反対討論の安倍政権批判に自民党席のあちこちから野次が飛び、反対討論を上回るボルテージに、岡田代表が「黙って聞け!」と感情を露わにする場面さえあった。
与党案では、次期総選挙で再び違憲状態との判決が出かねない。岡田代表は「自公案ではアダムズ方式での衆院選挙は早くて2022年以降」で「野田佳彦総理(当時)と安倍自民党総裁との党首討論から10年以上も経過することになる。国民に対する重大な公約違反」と提起した。
しかし、この与党案は数の力で、今国会成立が確実になっている。与党案は一票の格差是正にアダムズ方式を導入はするが、2020年の国勢調査のデータをもとに行う。それまでの対応として、2015年の簡易国勢調査データをもとに、小選挙区で『0増6減』、比例で『0増4減』する。
小選挙区で減少するのは「青森、岩手、奈良、三重、熊本、鹿児島」の6県。それぞれ1議席減らす。比例では「東北ブロック、北陸信越ブロック、近畿ブロック、九州ブロック」でそれぞれ1議席減らす。
政府・与党は衆院選挙制度改革を前進させたと訴えることになる。確かに、現行よりは前進する。また、民進党が作成・提案した付帯決議が自民、民進、公明、おおさか維新の賛成多数で可決した。
付帯決議は「選挙制度の見直しに際しては一票の格差是正や定数などの在り方のみの検討にとどまらず、立法府の在り方についても議論を深め、より望ましい制度の検討を行うものとする」としている。つまり、より民意を反映させる選挙制度改革を追及し続けていくという道を残した。
いずれにしろ、現行の国会議席の勢力では、政府・与党の前に、野党はチェック機能や政府の暴走の危険を回避・停止させる術を持てない状況にある。
安倍政権下での特定秘密保護法制定、憲法9条(戦争の放棄)での集団的自衛権の行使容認(解釈変更の閣議決定)、PKO活動での駆けつけ警護など自衛隊への新たな任務付与、閣僚の政治とカネにまつわる相次ぐ辞任、自民党議員による表現の自由・報道の自由・国民の知る権利への威嚇的発言など、わずか3年間に憲法に関わる問題や民主主義にかかわる問題が相次いでいる。
これらは「一強多弱」の政治構造から生まれてきたといえそうだ。大政翼賛会的な危険からの回避のためにも、政治勢力のバランスの重要さが浮き彫りになっている。
自公政権に対峙できる政権選択の「核」の役割を果たすために生まれた『民進党』には、今回の選挙制度改革の更なる取り組みと、野党共闘の核としての役割が、民主主義醸成のために求められている。
民進党が共産・社民・生活とどこまで結束し、自公政権と対峙できるか。憲法9条を守る、安保法制廃止・立憲主義回復という目標に留まらず、政権与党になった場合の堅実なマニフェスト(政権公約)を早く示すことが大事だ。
つまり、自公政権と民進党などの政権の長期的な方向性、政策の違い、あるいは自公政策と共通するところも含め、参院選挙までに1日も早く国民に明示することこそが、今、国民に政権選択の道を提供するとして誕生した新党(民進党)最大の責務のひとつといえよう。
そうした責務を果たすことが、自民党・公明党にとっても、日本の民主主義を発展させるうえでも重要になる。
さきの衆院北海道5区の補選で支持政党なしの層が誰を選択したか。共同通信社の出口調査で73%が自民公認・公明推薦でない無所属(野党4党推薦)の候補を支持した。また自民からの候補はなかったが衆院京都3区補選でも支持政党なしの層の72.6%が民進党公認候補を支持した。安保法制と合わせて、国会のチェック機能を強化するバランス感覚が働いた結果だろうと筆者は思っている。
有権者が現政権か、新しい政権か、選択の精度を高めるうえで、民進党には国政全般に対する明確な公約を早くに提示することが求められている。(編集担当:森高龍二)