東証が発表した5月9日~13日の週の投資主体別株式売買動向によると、外国人は3週ぶりの567億円の買い越しに転じ、個人は3週ぶりの137億円の売り越しに転じ、信託銀行は2週連続の289億円の買い越し。しかしこの週の主役はこの「需給三国志」よりも1393億円買い越した法人、648億円買い越した事業法人、1865億円売り越した証券会社の自己売買だった。
前週16~20日のカラ売り比率は、16日が39.7%、17日が38.2%、18日が37.3%、19日が37.7%、20日が38.3%と、SQ週の前々週は2日間オーバーしていた40%を1日も超えずにすんでいた。その分、需給は落ち着いたと言える。日経平均VI(ボラティリティ・インデックス/恐怖指数)も20日終値は26.18で、13日の27.30から低下。それでも24を割った3月下旬よりはまだ高い。
さて、今週は26~27日に伊勢志摩サミットがある。最近のG7サミットホスト国の期間中の株価指標の値動きを調べてみると、日本の前回、洞爺湖サミット(2008年7月7~9日)の時の日経平均は122円高、326円安、19円高。イタリア・ラクイラサミット(2009年7月8~10日)の時のミラノFTSE/MIB指数は-373、+211、-321。カナダ・ハンツビルサミット(2010年6月25~27日)の時のトロントS&P/TSX指数は+37(26、27日は土、日)。フランス・ドーヴィルサミット(2011年5月26~27日)の時のCAC40指数は-11、+33。アメリカ・キャンプデービッドサミット(2012年5月18~19日)の時のNYダウは73ドル安(19日は土曜日)。英国・ロックアーンサミット(2013年6月17~18日)の時のロンドンFTSE100指数は+22、+43。ベルギー・ブリュッセルサミット(ロシア・ソチの代替開催でホストはEU/2014年6月4~5日)の時のブリュッセルBEL20指数は+0.35、+9.41。ドイツ・エルマウサミット(2015年6月7~8日)の時のフランクフルトDAX指数は-132(7日は日曜日)。
今のG7サミットはマーケットにサプライズを引き起こすようなものではなくなっているが、それでも洞爺湖サミット最中の日経平均326円安や昨年のドイツなど、会期中でも大幅安の波乱に見舞われることがある。「サミット中は相場は動かない」と油断するのは禁物だ。テクニカル指標を見ると、トレンド系は20日終値の下には下値支持線になりやすい移動平均線3本が走り、その下には3月SQ値の16586円と、薄いとはいえ日足一目均衡表の「雲」が横たわる。一方、オシレーター系は買われすぎシグナルが2個点灯し「上値限定」。両方を合わせれば今週は上にも下にも動きにくくなる。需給データは、先物主導で派手に動かされる状況からは改善をみせている。
上値のメドは、上値追いをはね返す「まぼろしのSQ」を保つ5月SQ値16845円を超えたとしても、前週の日経平均が為替が円安に振れたのに思うように上昇できなかったことを考えると、心理的な節目の17000円を超えられるかどうかは微妙とみる。下値のメドは、16705円の25日線、16629円の5日線、16598円の75日線、16586円の3月SQ値、25日まで16385円の「雲」の上限と、何重もの「防衛線」が待ち構えている。実際は下げても「雲タッチ」まではいかず、16500円付近で止まるとみる。前週も17、18日は16500円の少し上のところで下落が止まっていた。
ということで、サミットがある今週はそんなに大きな変動はなく、日経平均終値の予想変動レンジは16500~17000円とみる。
前週は日本の1~3月GDP速報値も、アメリカのFOMC議事録も「市場予測」と大きくかけ離れ、サプライズでマーケットは混乱した。これは「色眼鏡」とまでは言わないが、先入観で物事を見てしまう「確証バイアス」というものかもしれない。先行する経済指標に引きずられた感があり、マーケットアナリストもやはり「人の子」なのか? それでも、「科学の子」の高速アルゴリズム取引は、経済指標の数値を「市場予測」と自動的に比較した上で、十万馬力で大量の売買注文を出してくるのだから、怖いことは怖い。(編集担当:寺尾淳)