スマートフォンやインターネット回線の営業では、強引な勧誘や説明不足、複雑すぎる解約の条件など、ユーザーが不利になるトラブルが起こりがちだった。今回の法改正は消費者保護の観点から販売する側の規定が強化されている。
総務省が先月、「電気通信事業法等の一部を改正する法律」を施行した。スマートフォンの契約トラブルが年々増加していることを受けたもので、今まで通信回線契約では適用されてこなかった初期契約解除制度が導入された。契約から8日以内(電子交付された電子メール、ウェブページの受領も含む)なら理由を問わず利用者の側から一方的に通知するだけで携帯電話会社の合意がなくても解約できるという制度で、事実上のクーリング・オフ制度といえるだろう。
初期契約解除制度では、家電量販店でスマホを購入した後に自宅では電波が届きにくいことが分かった場合や、料金プランの内容をよく理解しておらず他社の契約の方が安いことが分かった場合などでも解約できる。同制度のほか、「確認措置」という認定を受けた事業者の代替的取り組みもあり、対象は携帯電話やスマートフォン、モバイルルーターなどだ。法人契約に該当する場合は適用除外となるので、企業の担当者は把握しておきたい。また、事務手数料や通信料などは支払う必要があるということも注意点だ。同制度はあくまで「回線の契約」に対しての制度。解約の際の事務手数料や、解約までの期間に生じた通信料はきちんと支払う必要がある。さらに、端末自体の購入契約も解除されるわけではないので。「スマホが気に入らない」などの理由はNGだ。
なお、クーリング・オフ制度と違う点は、販売形態によらず解除が可能になっていることや、一定範囲であれば販売側が契約解除の事務手数料を請求できる点などなので、原則はクーリング・オフと同じと考えていいだろう。これは携帯電話ショップなど小売り店舗での契約にも対応できるように配慮されたものだ。
では実際に制度を利用するときはどうしたら良いのだろうか。まず必要なのは契約解除を行う旨の書面(ハガキも可)。これを契約日から8日以内に事業者に送付する必要がある。内容は契約者の氏名や住所、契約サービス内容などを記せば大丈夫。その後の手続きには業界統一の運用はないが、事業者の発行する契約書面には「8日以内に購入時と同一の状態で端末を返品する」と記載されていることが多いようだ。
解約制度ができたとはいえ、一番大切なのは契約する際に利用者が内容をきちんと理解することだろう。月々の支払い額や契約期間、解約金の条件のほか、業者名やトラブルの際の連絡先なども確認して書面で控えておくことが必要なのは変わらない。 (編集担当:久保田雄城)