【今週の振り返り】英国発のショックから回復し730円上昇した週

2016年07月02日 20:06

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ショックで緊急入院した世界のマーケット。手術はせず、集中治療室に入るまでもなく、急回復でピンチを脱したように見える。だがそれは「持病化」しただけのこと。

 29日の日経平均は3日続伸。28日まで中国の天津で開かれた世界経済夏季フォーラム(ダボス会議)が終了。ECBのドラギ総裁は今後3年間のユーロ圏のGDPの成長は0.5%下押しされると発言したが、イタリアの中央銀行は国内金融機関に約400億ユーロの資金支援を準備した。ブリュッセルではEU首脳会議開始。ヨーロッパの株式市場は揃って3ケタの急反発で、株安の地球周回がやっと止まった。金先物価格は低下、原油先物価格は上昇、シカゴVIX指数(恐怖指数)は急低下し20を割り込む。「3日ぶりの」という言葉があふれ、金曜日に一斉にリスクオフした世界のマーケットは、火曜日になってようやく本格リスクオンした。

 NYダウも終日大幅高で269ドル高の高値引け。1~3月GDP確定値は+1.1%に上方修正され、速報値より0.6ポイントも高く市場予測も上回ったが、数値は3四半期連続で減速し個人消費は下方修正。S&Pケース・シラー住宅価格指数は市場予測を上回り、CB消費者信頼感指数は5月より5.6ポイントも高い98.0の高水準だったが、調査が行われたのは6月23日より前。朝方の為替レートはドル円が102円台後半、ユーロ円が113円台後半。CME先物清算値は15555円だった。

 政府・日銀は8時40分から金融市場の安定を図るための会合を首相官邸で開いた。24日から会合を何度開いてもインパクトのあるものは何も出てこない。「開く」とアナウンスしてマーケットをけん制するのが目的か? 取引開始前に5月の商業動態統計が発表され、小売業販売額は前年同月比-1.9%と悪くやはり4月4日の中国政府の関税率引き上げによる「爆買い伝説の終わり」が影響した模様。既存店ベースは-2.2%。百貨店・スーパーは-1.9%、コンビニは+2.6%だった。

 東証調べによるとこの日、759社が株主総会を開催するが、集中度は東証上場企業の約3割まで低下した。「総会屋」も「シャンシャン総会」も昭和のなつかしワード? 日経平均は200円高の15523円で始まる。序盤は15500円をはさんで上下に動くが、9時台は徐々に水準を下げ、10時16分に15400円を割って15398円で底を打つ。上海市場はプラスで始まり比較的安定。10時台後半に15500円を再び超え、11時ちょうどに15570円まで上昇。小池百合子元環境大臣が都知事選出馬表明。11時台は落ち着き15500円台をキープ。前引けは220円高の15543円だった。

 上海市場は上げ幅を拡大して午前の取引を終える。後場の日経平均は少し高く始まる。1時までに24日の下げ幅1286円の半値戻しライン15595円を超えて15600円台に乗せ、1時21分にこの日の高値15626円をつける。為替のドル円は102円台前半で安定していたが、その後は戻り売りで上値が重くなり2時台には15600円を割り込み、終盤はさらに下げて終えたが、終値は243円高の15566円で大幅に3日続伸。TOPIXは反発した。麻生財務大臣は朝の「緊急会合」後に「流れとしては短期的に落ち着いている」と述べたが、まだ3日経過しただけ。病気で言えば、集中治療室に入るまでもなく急性期を脱したところで、いつ「急変」が起きるかわからない。

 東証1部直接上場のIPOが2件あった。ソラスト<6197>が東証1部に新規上場。医療事務、介護、保育のサービスや、それらにたずさわる人材のスキルアップ、キャリア支援を行う。旧社名「日本医療事務センター」。1992年にジャスダック、2002年に東証2部に上場したが、2012年にMBOで上場廃止になった「出戻り組」。公開価格1300円より6.0%安い1222円の初値がつき黒星。新興市場よりIPOの成績が悪い東証1、2部で、加えて出戻り上場では、やはり不利だった。

 名古屋市が本社のコメダHD<3543>が東証1部に新規上場。全国約700店舗の「珈琲所コメダ珈琲店」チェーンを運営するコメダの事業持株会社。名古屋の喫茶店の名物「モーニングサービス」もあって知名度が高く、株主優待期待で春先から話題だった。優待は半期ごとに1200円相当の専用プリペイドカード進呈。公開価格960円の1.94倍の1867円の初値がついて余裕の白星。6月の新規IPOが全て終了し、12件(TOKYO PROを除く)の成績は11勝1敗と、激しく揺れ動く世界のマーケットをよそに好調だった。

 日経平均終値は243.69円高の15566.83円、TOPIX終値は+23.07の1247.69。売買高は21億株、売買代金は2兆2060億円。値上がり銘柄数は1635、値下がり銘柄数は270。プラスは30業種で、上位は保険、鉄鋼、電気機器、その他金融、その他製品、海運など。マイナスは水産・農林、小売、食料品の3業種。上海総合指数は0.65%高で3日続伸した。

 30日の日経平均はかろうじて4日続伸。ブリュッセルのEU首脳会議2日目はEC加盟前の1972年以来44年ぶりの英国抜きの討議。離脱後もEUの単一市場へのアクセスを維持したいという虫のいい「いいとこ取り」はさせない方針。国民投票のやり直しを求める英国内の「離脱しないかもしれない症候群」を封じる狙いもある。覆水盆に返らず。スコットランドの単独行動もEUは相手にしない。連合王国から離脱・独立を果たすまでおあずけ。対ユーロのクローネ高に苦しむデンマークが為替介入。日本も円高に苦しんでいるのだが……。ヨーロッパ市場は揃って3ケタ高続伸。ロンドンFTSE100は国民投票前日の6月22日の水準まで戻った。ECB周辺からは「この程度ですんでよかった」という声が聞かれるが、安心するのはまだ早い。

 アメリカの個人消費支出は2ヵ月連続プラスで市場予測と一致。仮契約中古住宅販売指数は-3.7%で市場予測を下回ったが、NYダウは徐々に上昇が続く一日で284ドル高。週間在庫統計が減少し原油先物価格終値が2ドル以上も上昇して終値49ドル台になったのが支え。利上げならぬ「FRBの利下げ期待」まで出てくる始末。長期金利も上昇しリスクオンしたが、ドル安を背景に金先物価格も少し上昇。朝方の為替レートはドル円が102円台後半、ユーロ円が114円台前半で、ユーロ高が進行した。一方、英国ポンドは対円138円台まで下落し、これがロンドン市場の株高の要因。CME先物清算値は15740円だった。

 取引時間前に発表された5月の鉱工業生産指数は-2.3%。3ヵ月ぶりのマイナスで市場予測のプラスマイナス0%を大きく下回った。熊本地震の影響が大きい。しかし日経平均はCME先物清算値にほぼさや寄せして185円高の15752円で始まる。1286円安だった24日の半値戻しラインを大きく超える。TOPIXも大幅プラス。しかし序盤の高値は9時7分の15781円で、24日の3分の2戻しの15800円にはタッチできず15700円台で小動き。10時台はドル円が少し円高方向に振れたので日経平均は15700円を割り込むが10時38分に15642円の安値をつけてもプラス圏は維持。上海市場はプラスで始まってほどなくマイナスに沈む。11時台は上海がプラスに戻り日経平均も再び15700円台に乗せるが、前引けは127円高の15694円だった。ソフトバンクG<9984>はアローラ前副社長(顧問)についてアメリカのSEC(証券取引委員会)が調査に入るという報道で急落。利益相反の疑いだが会社側はコメントせず。