法改正の浸透状況はどの程度なのか、ゼネラルパートナーズが20~60代の障害588名を対象として、障がい者雇用における差別禁止・合理的配慮に関するアンケート調査を実施した。アンケート結果では、法改正について認知している人の割合が69%であったが、その内容まで認識している人の割合は27%とまだまだ低い認識率だったことが明らかになった。
4月1日より「障害者差別解消法」「改正障害者雇用促進法」の2つの法律が施行され既に数カ月が経過した。両法改正では生活の支障を改善するための合理的配慮の提供を義務付け、相談体制の整備等を促し、障がい者であることを理由とする差別を禁止するもの。法改正の浸透状況はどの程度なのか、ゼネラルパートナーズが20~60代の障害588名を対象として、障がい者雇用における差別禁止・合理的配慮に関するアンケート調査を実施した。
アンケート結果では、法改正について認知している人の割合が69%であったが、その内容まで認識している人の割合は27%とまだまだ低い認識率だったことが明らかになった。さらに、当事者で差別を受けたと感じることが少なくなったと答えたのはわずか8%と、法改正による効果が充分表れているとはいえない内容となった。なお、当事者が改正法によって変わってほしいと望んでいることには「ハンディがる部分以外は健常者と同じように扱うこと、障害を一つの個性と捉えること」等があったとのこと。
厚生労働省の障がい者雇用状況の集計結果によれば、2015年の雇用障がい者数は45万3133.5人と前年比で5.1%増加。障がい者雇用に関しての状況は近年の就労支援に対する働きかけにより、法改正以前の段階で既に改善傾向にある。ただし、一般就労への移行率が上昇傾向にあるいっぽうで、「就労移行支援事業、就労継続支援事業」といった障がい者の就労を支援する事業を実施している事業所全体で見ると、移行率0%の事業所も未だに大きな割合を占めており、事業所による就労移行率の両極化が進んでいることが課題となっている。また、障がい者の法定雇用率2%未達成の企業が半数以上(52.8%)にも及ぶ。障害別の定着率での課題もあり、13年の調査によれば、1年経過後定着率は74.4%なのに対し、精神障害者や発達障がい者が60%台と低い水準にある。障がい者差別意識も根強く残っており、ネットなどでは障害者に対する差別的発言が溢れている。
合理的配慮では個別的な環境を考慮した柔軟な対応が必要になってくるが、当事者はもちろんのこと遂行義務のある企業等にとっても解釈に余地を残す内容となっており、障がい者を取り巻く環境の改善は一部にとどまっている。今回の調査のような、「法改正が浸透しているか」や、「合理的配慮が職場で実施されているか」を確認するための手段は有用であり、こうした調査内容に基づいた指標を設定することが法改訂の浸透にとって必要となる。(編集担当:久保田雄城)